第5話「一人でいること」
孤立。孤独。孤高。
孤立は心境と状況を、
孤独は感情と環境を、
孤高は印象と信条を指す。
どちらも「一人」であることを意味するが、「孤高」に比べて「孤立」や「孤独」というものはマイナス・ネガティブなイメージを持たれる。
孤独死なんてフレーズがもはや当たり前のように、ニュースで報道されているのを見た人もいるだろう。支援の手がなかったとか、家族と離れていたとか、人付き合いが極端に少なかったとか……死んでようやく、その人が抱えていた問題の重大さ・根深さを
「孤独」——いや、「一人であること」を真剣に考えたこと・付き合ったことのない人は、「人に頼れなかったんですかね」と訳知り顔でものを語る。そういうのを見ると
一人でいることの何が悪い。
一人にならざるを得なかった。
一人でなければいけなかった。
一人だからこそわかることがあった。
上記のように、一人でいることにメリット・デメリットを見出している人は自分以外にもいるはずだ。自分は一人暮らしであるため、否応なしにメリット・デメリットと向き合わざるを得ない毎日だ。
ただ、こういう生活を続けていると、必ずといっていいほど投げられかける問いがある。
「一人は寂しいでしょ?」
そうと聞かれれば答えはイエスであり、ノーでもある。
「そりゃあ寂しい時もあるさ。でも、わずらわしい人間関係から逃れることもできるからね。このままだと孤独死だって? HAHAHA、そんなに僕のことを心配してくれるなら、今すぐ僕にピッタリなパートナーを紹介してくれたまえよ。そうだな、家事の分担がきちんとできて、経済感覚もしっかりしていて、誠実かつ一途で、スタイルもいい人、美人だとなおいいな。家に早く帰った時があれば、僕の帰るタイミングに合わせてご飯を作ってくれるならもう最高」
上記のように言えば総スカンである。ほぼ本音。
「一人は寂しいでしょ?」と言うような人は「一人」を体験したことがないのかもしれない。もっと言えば、「孤立」「孤独」を体験したことがない可能性がある。常に誰かがそばにいて、気軽に話ができる状況にある。SNSで「おはよう」とつぶやくだけで、リプライ(返信)が何件もつく。通話アプリには常に新着が届いている状態だ。もちろん、既知の友人からの。
常に誰かが近くにいる。だから「孤立」「孤独」と無縁の生活を送れている。
それが悪いとは言わない。むしろ結構なことだ。全人類がこのように人と人とが気楽につながれれば、誰にも頼れないままの孤独死は減るのではないかと思うほどだ。
ただ、一方で一人でいることを好む人もいる。それは確実。
そういう人は放っておいてあげればいい。その人が孤独死しようが——その人が選んだ道ならば尊重してやれればとも思う。
一人であるとは良いことだろうか。悪いことだろうか。
それは人によって、時と状況によって答えが変わってくるものだ。自分自身がどう思うか、によっても。
だから一概に答えは出せない。それでいいのではないだろうか、と自分は思う。
自分はどうかって?
寂しくもあり、楽しくもある。めんどくさくもあり、気楽でもある。一人暮らしとなり、物理的に家族と距離を置いたのはいいが、離れてみると意外と恋しい時もある。
そして、一人きりで夜を過ごすことが怖いと思うこともある。わけのわからない不安に駆られることも。
ただ……こうして今、一人で集中して文章を書けることは嬉しいし、楽しい。一時期、持病のせいでどんなに頑張っても書けなかったことがあったため、余計にそう思う。
一人であることの是非はともかく、一人の頭の中から泡のように浮かぶ物語を書き起こすのは楽しい。
それだけははっきりと言える。
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