第4話

おばあちゃんは少し考えていた。私たちにわかるように話そうとしてくれてるんだ。どうして生きてるの?とっても難しい質問だね。その主体はどこにあるのかな?今の自分、それとも過去や未来の自分かな?考えたことがなかった。おばあちゃんは何が言いたいのかな。私もふとした瞬間に、どうしていまここに私があるんだろうっていうね、世界から自分が独立して浮きだったように感じることがあるわ。世界から自分を発見するみたいね。そのあとにどうして?を考えるのかもしれないわね。私が私に気づかない限りどうして生きてるかなんか考えないのかもしれないわ。やっぱり何が言いたいのかわからない。だけど、なんかヒントがありそう。過去や未来の自分はどういうことなの?そうね。どうして生きてるの?って生きることには意味や目標があるって思ってるから、そう考えるんじゃないかな?昔の自分は未来にこうなりたいって思っていたけど、現実の自分は全然思った通りの自分ではない。自分は何をしてきたんだろう。目標のためにがんばれなかった自分、社会が作った理想通りに生きれなかった自分。無駄な時間、意味のない時間を過ごした自分はだめ。そんな自分には未来の自分がうまく予想できなくて、何を目的に生きていったらいいかわからない。だめの連鎖、無駄で意味のない存在の連鎖。無駄で意味のない私が生き続けてる。無駄な人生。意味のない人生。私の人生がまさにそう。なんか不思議。なんかちょっとしっくりきた。今までの私は、私の人生が無駄で意味のないものだって思いたくなくて否定しようともがいていたんだ。またいつものくせで自分の世界に入っていた。どこからがおばあちゃんの話でどこからが私の思考かはもうわからないしどうでもよかった。なにかの「ために」行動するって人は考える。当たり前だよね。「生きる」以外の行動はみんななにかのためだもん。最終的には「生きるため」だもん。だけど、なんのために生きる?には、それが許されないんだ。だって目的よりも先に私たちは生きてしまっているんだもん。生きることを始めちゃってるのに、どうして生きてるの?なんかわかるわけないじゃん。そんなの生きる前の私に訊かなくちゃ。あはは。なんか面白い。ちょっと心が楽になった。気が付くとそろそろ帰る時間になっていた。女の子とおばあちゃんもいつの間にかいなくなっていた。お腹がすいてきた。生きるために食べないと。家に帰ろう。その夜は、過呼吸の疲れか何かへの気づきによる安心かはわからないけど、すぐに寝ることができた。生きるために寝た。

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