第3話

女の子は楽しそうな笑顔でブランコを漕いでいる。おばあちゃんもそれを見てうれしそうだな。いいな。幸せそう。私は私の幸せがわからない。楽しいこともわからない。早くこの時間が終わればいい。早く一日が終わってほしい。幸せなんかまやかしだよ。死んだら全部が消えてしまう。幸せだって思ったことも忘れてしまう。思った私さえ消えてしまうんだもん。結局死ぬまでの時間つぶしが生きるってことでしょ。そんな悪態をついてみた。でも、いいなって思った自分がいる。幸せってなんだろう。自分の幸せはわからないけど、他の人の幸せはなんとなくわかる気がする。あのままどっちかが死んじゃったら、幸せじゃなくなるんじゃないかな。死ぬことは幸せの逆なのかな。でも人はみんな死ぬ。みんな最後には幸せじゃなくなるのかな。幸せ。。。どうして生きてるんだろう。。。おねえちゃん、だいじょうぶ?女の子が私に声をかけてくれた。私の耳じゃなく私の心に。暖かい声だった。泣くのをこらえながら笑顔で、大丈夫だよ、と返した。おねえちゃんはどうしていきてるの?えっ、急に心臓の鼓動が速くなった。何?どういうこと?私は試されているの?どうして生きてるの?どうして生きてるの?どうして生きてるの?やばい、息を吸うのが止まらない。息が苦しい。どうしよう、苦しい。。。誰か助けて。。。でもこれで死ねるのかな。大丈夫かい?息を吸っちゃいけないよ。少し息を止めて、息をゆっくり吐きなさい。大丈夫。大丈夫。背中を撫でてくれている。手が暖かい。女の子も心配そうに手を繋いでくれている。手も暖かい。だめだ。涙が止まらない。呼吸がさらに粗くなってきた。つらいよう。意識がとびそう。。。15分くらい横になってたのかな。落ち着いてきた。女の子が元気なく謝ってきた。ごめんね。わたしがおはなしたから。おねえちゃんくるしかったね。ああ、こんな小さな女の子を悲しませてしまった。私のせいだ。私が生まれてきたから。私が生きているから。私がこの子と出会ってしまったから。ごめんね。ごめんなさい。おばあちゃんは何も言わずに横に座ってくれている。そういえば。どうしてあんなことを訊いたのかな。ねえねえ、どうして生きる意味を知りたかったの?うーん。わからない。おねえちゃんのこころのこえがきこえたから。わたしはぶらんこがたのしいから。おばあちゃんがやさしいから。この服のねこちゃんがかわいいから。あとはね。あとはね。。。もう一度訊き返されるのにびくびくしながら話を聞いた。生きる意味なんかないよ。そう言いたい気持ちとそう言いたくない気持ちがあった。おばあちゃんは?女の子がおばあちゃんに訊いてみた。私も興味があった。

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