スポットライトアンサー

かずぺあ

第1話 話題の漫画

僕の学校ではある噂で盛り上がっている。それは今ネット上で話題になっているとある漫画についてのことだ。ネット上で連載されているその漫画は、有名漫画雑誌で連載している著名な漫画家や芸能界の漫画好き、動画配信をしているインフルエンサーなどから面白いと絶賛されている。


圧倒的な画力に、緻密なストーリー。最近流行りの伏線に魅力的なキャラクター。独特な台詞回しに、読者の心に響く名言。確かにその漫画は面白いと思うが、人気が爆発したきっかけは一つの噂からだった。


ネット上に凄い漫画があると話題になる少し前、ある編集者がその漫画に目を付けていた。その編集者はネットで無料公開されている漫画を見つけ、商業雑誌での連載を打診するメッセージを送ったのだが頑なに断られたという。噂では破格の契約内容だったらしいのだが。


諦めきれなかった編集者はせめてその漫画を知って欲しいと、「ゴミの中に埋もれているダイヤモンドを発見」とSNSに投稿し炎上したのは有名な話だ。


その話はネット上で拡散し、日本の有名雑誌のすべてのオファーを断っただとか、金儲けの商業誌に反逆だとか、色々と噂が飛び交い漫画の面白さとミステリアスな作者への考察が重なり世にでることになった。


「無料で読めるのはありがたいけど、見合った対価を貰ったほうがいい」


「作者の自由にやれるから、この漫画が描ける」


「軽く計算してもヤバい金を損してる」


「きっと凡人にはわからない感覚」


「なんでもいいがちゃんと完結まで描いて欲しい」


ネット上では色々な意見が飛び交い、漫画のストーリーを考察するものから、作者を推測するものまで現れた。


そんな噂の一つに作者は僕の学校にいるというものがあった。それは、登場人物に僕の学校付近の地名の一部が入っていること。風景のデッサンが学校付近にある風景と類似していること。そしてテスト期間に更新が無いことから推測された噂だ。


そんな噂話を本気にし、一躍時の人となった誰も知らない作者を探そうしているのが僕の友人の葛西勇人かさいゆうとだ。


「なぁ 雅也まさやは誰だと思う?やっぱ美術部の誰かかな?」


「さぁ?その噂が本当でも特定するのは難しいんじゃないか」


「それがそうでもないんだ」


「なんでだ?」


「俺は発見したんだ!これをみろ」


印刷した紙広げ指を差す。


「清く 正しく 美しく」


そこには漫画に出てくる三人のキャラクター。その三単語は各々が着ているTシャツに描かれていた文字だった。


「これが?」


「うちのクラスのスローガンだろ 担任が勝手に付けた」


確かにそんなことを言っていたのを思い出した。だが、僕はそんなことを書いた記憶は無い。僕は勇人ゆうとの頼りない推理に少し期待をしてしまった。


この漫画の原作は僕が書いた。だけど、僕の物語を具現化し生き生きとキャラクターに命を吹き込んでくれている人のことを知らない。いや、知らなくていいと思っていた。だけど、この日からその気持ちがぐらつくことになる。

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