6話 酷いやつ
後ろから彰が飛びついてきた。
「Hello!研吾」
「重いよ彰!」
「ごめんごめんw」
「えっと…おはよう!!」
恥ずかしがる心を抑えて面と向かって彰に挨拶をする。
「おう!」
彰は目を見開いてから元気に笑ってくれた。
こんなに大きな声を出したのはいつぶりだっけ?
僕はちゃんと前へ進めているのだろうか。
後ろから田中くんも追いかけてきた。
「おはよう、北川、鈴木。」
「はよ〜」
「おはよう田中くん♪」
「おおぅ、いつになくテンション高いな鈴木」
「うわっきも。」
「な!悪いかよ」
そんなにわかりやすかったかな?でも。
「友達できたの、久しぶりだったんだよ…」
「いつも俺のことすました顔で見てたくせに、そんな風に思ってくれてたの〜
可愛いところあるじゃん。な!奏!」
「あぁ、今のはちょっと可愛かった…」
カァーッ顔に熱が集まってくるのがわかる。
「別に!」
「なんだよ〜恥ずかしがっちゃって〜」
コイツら〜
二人してニヤニヤしやがって、先に学校行ってやる!
「おい!急に走るなってー!」
「大丈夫だ。
鈴木!ちゃんと可愛かったから!」
「田中くん、僕そこ気にしてるんじゃないから!」
──なんでもう追いつかれてるの!?
全速力で走っていたのに、彰と田中くんが隣に並んで走っている。
「鈴木!無理するな!」
「無理、してないから!」
「研吾!お前には体力がない!」
「ないわけないだろ!
それに彰だって息切れてるじゃないか!」
「俺っは、息切れてない!」
「嘘をつくな。
今止まらないと二人ともぶっ倒れるぞ」
田中くんが僕たちの言い合いを冷静に止める。
──昨日怪我して無理してた田中くんが言っていいことじゃないと思うんだけど…
てか田中くん昨日足にヒビ入ってたよね!?
「なんでっ!?
田中くんは息ひとつ乱れてないんだよ!
昨日足怪我した癖に!体大切にしろよ!」
「諦めろ、奏は化け物だ!
こいつ怪我しようが毎日部活で校庭50周してる!」
「それを先に言っといてよ〜!」
「ちょっと待て!
人をサイボーグみたいに言うな!」
『「はぁはぁはぁ」「ゲホッゲホ」』
「ちょっと、はぁはぁっ大丈夫かよ彰?」
「だいっ ゴホ じょーぶ」
絶対大丈夫じゃないじゃん。
彰めっちゃ「運動できまーす」みたいな雰囲気だしといて僕以上に体力ないのびっくりなんだけど…ちょっとダサい。
てか、田中くんはほんとにサイボーグだし。
「俺のお茶いるか?」
「ありがと田中くん」
「…ちょっと待て」
彰が重大なことに気づいてしまったと言わんばかりに言う。
それにより緊張感が僕ら3人の中で走る。
「………どうした?」
「これは…間接キスになるのではないか?」
変に緊張して損した。もの凄くどうでもよかった。
「そんなのどうでも…」
「そうか…ありがとう北川。
今、お前はこの3人を救ったんだ。」
うそでしょ、そんな重要だった?
なんか田中くんこの世界救ったぐらいの感謝してるけど、たかが間接キスだよ?
そんなに…ねぇ?
「何してるんだ?握手するぞ研吾!」
「来い!鈴木くん!」
そんなにか…まぁ確かに高校生だしそんなものなのか?
「ところで、進路二人どうすんの?」
「俺は体育推薦で大学行くかなー」
「おお!奏らしいな。研吾は?」
「………。」
「…鈴木?」
「お前!まさか…嘘だろ!?」
今思い出したよ、てか過去に戻ってから体感3秒ぐらいだよ?
今の状況に適応するのだけで精一杯だったのに…進路決めろだなんて無理に決まってるじゃん。
僕何にも覚えてないんだよ、彼女の名前も顔も…何もかも。
こんなの僕がアインシュタインやエジソンでも決めるの無理だと思うよ。
「そういう北川はどうなんだよ」
「俺は………」
「ほら!彰だって…」
「俺、先生になりたい。」
彰はもっと派手な職業を選ぶと思ってたから意外で僕は田中くんの方を見た。
田中くんも同じことを思ったようで僕と田中くんは目が合う。
だがその直後に納得した。
彰は好きな人…森ちゃん先生と早く肩を並びたいのか。
「そっか、でも先生になれるほど彰って成績良かったの?」
「ふははは!
それは愚問というものだ。
確かに俺は2年の時までは悪かった。だがな!3年からは模試をなんとか上位10位を保っている。
あの本城も合格圏内だと模試の結果が出た!」
──本城だって!?
そんな頭よかったのかよ彰。
本城なんて全国から志望者が集まる超有名国立大学だよ?
学校名間違えてるんじゃなくて!?
「北川は本城目指してるのか?」
田中くんは僕と違って特に驚くこともなく落ち着いたまま彰に質問をする。
「もちろん!本城の教育学部一択だ!」
「なら俺もそこ行こうかな。」
「軽っ!?
本城はそんな簡単に受かるものじゃないでしょ!
それに彰さっきノート取ってなかったじゃん!」
本城を舐めるなよ。
「No problem 俺は普通の人と違って進んでるからw
庶民どもせいぜい頑張ってくれ!
アヒャヒャヒャヒャ」
うぜぇーどうしようもなくうざい。
「実は言ってなかったが俺も本城のスポーツ推薦を受けないか勧められたんだ」
「ええー!?」
「別にそんなに驚くことじゃないだろ?
奏は甲子園でも活躍してるし大学なんて引くてあまただろ」
「そうなの!?」
「はぁ…ちょっと鈴木は他の人にも興味を持った方がいいぞ」
田中くんがため息混じりに僕に忠告する。
「そんなに有名人だったの?」
「誰も友達がいなくても耳に入るレベルだぞー」
「そんなに言われたらちょっと照れる。
しかし鈴木は俺のこと知らなかったか…」
田中くんが僕を悲しそうな目で見つめる。
そんな悲しそうな目を向けないでよ田中くん。
全然知らなかったんだよ、それに彰は僕に友達全然いないって言ってるようなものだよね?
「ごめんね。田中くん。」
「別に大丈夫だ。」
「本当に酷いな!研吾は!」
「なっ別に彰は関係ないだろ!?」
「いや、あるね!
初めて会った時に絶対に話しかけるなよオーラ出しまくって怖かったし、話しかけたら『お前誰だよ?』みたいな顔してましたー!
ずっと俺、研吾の前の席で毎日!
毎日顔合わせてたのに顔すら覚えてなかったね!」
ええ?そうだったの?
隣にいる田中くんも大きく頷いてる。
確かに僕、戻った時彰や田中くんのこと全然覚えてなかったんだよな。
「そんなにやばかったんだ。」
「おまえええ!覚えてないのか!?
まだまだあるんだからな!」
彰が怒りながら僕の制服の襟を掴んで、揺らす。
彰全然手離してくれないんだけど…
こんなに力あったの?てかそろそろ離してくれないと僕死ぬ!
死んじゃうから!離してー
「北川!
これ以上したら鈴木が窒息して死ぬ!」
田中くんがすかさず助けに入ってくれた。
ふぅ 田中くんが止めてくれなかったらまじで彰に絞め殺されてたよ。
「はぁはぁ
なんで止めるんだよ!絶対奏もあるだろ!
研吾に言いたいこと」
「俺は一方的に鈴木を知っていただけだからな。
同じクラスにもなったことなかったし。
別に鈴木が俺を知らなくても仕方がないって感じだ」
「それ絶対、クラスで威圧感出しまくってる前髪異常に長いやつで有名になってて知ってたんだろ!」
そんなに!?そっかそんなやばいやつだったんだ。
確かに思い返してみたら高校生の時やばかったかもしれない…。
てか、前髪異常に長い奴って別に僕の前髪普通でしょ。
「違うぞ。
俺と鈴木は1年の頃からずっと同じぐらいの成績だったから成績貼り出されている時によく鈴木の名前を見かけて勝手に俺が仲間意識を持って鈴木を知っていただけだ。
それに鈴木は1年の頃から補習来なかったから俺のことを知らなくても仕方がない。
何回か話しかけてみたが無視されたのは解せないが…」
「まぁ!見なさい!
普通はこうやって友達を増やしていくのよ!?
それなのにあんたって子は〜人が話しかけても迷惑そうな顔ばっかりして、しまいには無視だなんて!」
彰がお金持ちのマダム口調で僕を捲し立てる。
「ごめん。二人とも、本当にごめん。」
「おう…。
ちょっと俺も言いすぎたかもだからいい…よ?」
「はぁーやっと仲直りしたか、長かったな。彰は単純なんだから適当に謝っておけばいいんだ」
田中くんが爆弾発言をする。
「どうゆう意味じゃごらぁ!!待て奏!」
ツンデレモードを解除した彰がバックを振り回しながら、逃げる田中くんを追いかけている。
それにしても僕は田中くんにも彰にも色々と酷いことしてたんだな。
そんなやつだったのに二人とも僕と友達になってくれたんだ、本当に優しいな。
こんな良い人たちと出会うことは僕の人生の中であと何回ぐらいあるのだろうか?
「僕も…目指そうかな本城。」
「急にどうしたんだ?」
走り回ってた彰と田中くんが足を止めて、僕の話に耳を傾ける。
「だって、みんな本城行っちゃったら寂しいじゃん…」
彰と田中くんが目を見合わせてニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべている。
いいじゃないかそう思っても久しぶりにできた大切な友達なんだから。
それにこんなに酷いことしてたのに友達になってくれた人たちなんだ。
大切にしたいよ。
「それなら、研吾も勉強頑張らなくちゃなー」
「へ?」
「そういえば、前に貼り出されていた順位を見たが鈴木は193位だったな」
「やばいねー?けんごくんw」
「なっ!なんで僕の順位言っちゃうの!?」
僕の順位を言っちゃうなんて…。
田中君、「大丈夫だ」とか言いながら少し根に持ってた?
「口からポロポロっとw」
田中くんちょっと笑ってるし、絶対根に持ってるよね!?
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