3話 ツンデレ


「あーやっとお昼ご飯だ〜!

俺お腹空きすぎて早弁しようか本気で悩んだぜ〜

研吾、ノートなんて書いてないで早く購買行こうぜ!な?」


「いや彰、ノートは書いといた方がいいと思うよ?

受験でも役立つだろうし…。」


「いいの!ノートより購買のほうが俺にとって大事!

研吾が行かねえならお前にパン欲しいって後で言われてもあげないからな!」


『ドタドタ』


 はぁ、彰は元気だなぁ。

 そういえば、僕お弁当なんて持ってきたか?


「…ちょっと待ってよ!彰!!」

 

 僕は結局購買戦争に負けて、残った食パンになった。ひもじい。


 ちなみに先に行った彰はカツサンド、カレーパン、そしておやつのドーナツまで手に入れた。

 そんな彰は今、隣でドヤ顔をしている。


「研吾、屋上行こう。」


 今日学校行く時ものすごく寒かった。

 進路希望調査をとる時点でもう3年の半ばはもうすぎているだろう。


「なんで?屋上なんて寒いじゃんか。

教室にしようよ。」


「研吾忘れたのか?

協力するって言ったくせに、裏切り者〜もう研吾なんて知らないんだからな!」


 彰はそう言いながらも横目で不安そうに僕をチラチラ見ている。

 あれかな「勢いで言っちゃったけど言いすぎちゃったかな?」みたいな「どうしよう傷つけたかな?」とか思ってそうだな。それにしても僕は彰と何か協力するって約束をしてたんだな。

 教室で話せないと言うことは人には聞かれたくないことなのかな?


「あっあのな…。」


 彰が不安そうな顔をしながら口を開く。


「わかったよ。

あと彰、そんなに気にしなくていいよ。」


「別に、気にしてないし。さっさと行くぞ!」


 そう言った彰の耳は少し赤くなっている様に見えた。


「よしっ誰も屋上いないな!」


「そうだね。」


「どっこいしょ」


「研吾って案外渋くねw」


「悪いかよ」


 中身のおじさん臭さい部分を指摘されて少し拗ねて答える。


 彰が僕の食パンをじっと見てる。


「……。」


「どうしたの彰?

 僕のパン見て、パン3つじゃ足りなそう?」


「いや、そうじゃなくて研吾が食パンだけじゃ味気なさそうであまりにも哀れだからカツサンドのカツ半分あげようかと思って…。」 


「僕がパン欲しがってもあげないんじゃなかったの?」


「うん、でも俺の相談乗ってくれるからあげる。でも俺の役に立たなかったら返してもらうからな」


「wwwありがとうw」


「なに笑ってるんだよ。返せよ。」


「ううん。何でもない」


 照れ隠しがすごいなぁ、心の中が張り詰めていた糸がふんわりと軽くなった気がした。

 それにしても前に彼女の使ってたツンデレってこういう人のことを言うんだろうな。

 やっとツンデレの言葉の本当の意味がわかった気がする。


「それで話だけど。」


「うん」


「どうやって森ちゃん先生に告白しようかな〜と」


「はぁ!?」


 彰の予想外の相談に思わず大きな声が出る。


「なんだよ、その初めて聞くかのようなリアクションは」


「いや、なんでもない。うん。」


 マジかー先生のこと好きなのか。

 てか驚きすぎて口の中にあったパンあんなところに飛んでるじゃん!?

 汚な!いや、そんなことどうでもいいや。

 よくないけど、でも彰の方の方が重大だ。

 脳死でもダメだとわかるんだよな。

 告白しても振られるだろうし、例え告白がうまく行っても先生と生徒の恋愛とか絶対先生が学校辞めさせられちゃうし。

 なんとかして告白を諦めさせないとな。

 でも彰すごく良いやつだから応援してあげたいんだよな。

 なるべく、なるべくオブラートに包んで話すにはどうすればいいんだよ。

 わかんないよ。


「やっぱいいや。」


「えっ?」


「だってなんか研吾すごい悩んじゃうんだもん。」


「ごめん。あっそうだカツ返す。」


 相談にのってあげられなかったのにカツだけ貰うのもなんだと思い、カツを返そうとする。


「…流石に俺もそんな食べかけのカツ食べないよ?」


 これは彰の僕への優しさなのか、単純に引いているだけなのだろうか、それともどっちもかな?












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