1話 彼女と出会う前に…

「けんご、今日は雨降るから傘持って行きなさいよ!!」


 僕はまだ走馬灯を見ているのだろうか?

 部屋のドアを開けている母さんがまだ若い。

 それにまだ実家暮らしだし、高校生の時の制服が掛かってる。

 別に夢の中でもいい。

 夢の中では彼女が幸せでいて欲しい。

 たとえもう顔も名前すら思い出せなくても。


「うん、わかったよ母さん。」


 僕は力強く傘を握りしめる。もう2度と間違えないように。


 学校に着いたのはいいけど、今俺は何年生だろう?

 適当に側にいる先生探して話しかけてみるか?

 いや、でもそんなことを聞いて不審者に間違われたらどうしよう…


「おい〜

どうしたんだよっ研吾、下駄箱の前でうろちょろして。」


 誰だろう?

 the爽やかイケメンって感じの人に話しかけられた。

 名前呼ばれてるってことは知り合いだよな、どうしよう思い出せない。

 僕ほんとに何にも覚えてないんだな。

 とりあえず返事しといた方がいいのか。


「やっやっほー?」


「ん」


「それで?どうしたんだよ下駄箱の前で、しかもここ1年の下駄箱だし1年になんか用でもあるのか?」


「いやっ特に…ないけど…」


 なんかすごい見られてるやっぱり怪しかったかな?

 でもたくさん話してボロ出すよりいいよね?多分…


「…なんか今日、具合でも悪い?」


 なんだ、心配してくれてただけだったか。心配してくれるってことは僕、この人と仲良かったのかな?

 仲良かった人まで覚えてないとかなんか申し訳ないな。


「大丈夫‼︎えっと心配してくれてありがと!!」


「ふふん。当たり前だろ?親友なんだからな。」


 やっぱり彼とは仲良かったんだ。

 彼なら僕のクラス知ってるかもしれない!!


「あのさっ」


「あぁもうこんな時間だ‼︎早く教室入らないと遅刻にされるっ研吾走るぞ!!」


「へっ!?」


 彼が手首を掴んでひいてくれたおかげですんなりクラスに入れた。

 どうやら彼と同じクラスだったらしい。クラスに入った直後チャイムが鳴った。


「ふぅ ギリギリセーーーフ」




「セーフはセーフでもギリギリだ!

 北川はいつもそうとして、今日は鈴木も遅刻ギリギリか…明日からはしっかり早めに着くように。わかった?」


「いや、森ちゃん先生聞いて!

俺、今日はいつも森ちゃん先生に言われてるから、そろそろしっかりしないとなって思って、ちょっとだけほんのちょっとだけ、気持ち早めに学校きたんだよ?

 でもさ〜1年の下駄箱で立ってる親友いたらほっとけないじゃん?でしょ?

 つ ま り、俺悪くないのよ」


彼が、いや北川くんが胸を張り誇らしげな顔をしている。


「…えー二人とも席につけ。」


 先生があからさまにめんどくさそうな顔をする。


「ちょいちょい俺無視されちゃった?」


「はぁ、じゃあ明日からも早く来るように」


「はーい」


 えっと僕の席はどこだろう?

 席が残ってるのは、窓際の前後の席か…前と後ろ2択だな、うーんとりあえず前の席座るか。


 後ろにの席に北川くんが座る。

 よし!どうやら僕は2択で正解を引いたみたいだ、良かった。


「はぁ 北川、鈴木ちゃんと自分の席に着け」


「ういっす」


 北川くんがうざい返事をする。


 えっどういう事?

 ここ僕の席じゃなかったって事?

 …じゃあなんで北川くん何も言わなかったの?

 何をしたいのこの人?


「研吾座らせて」


「……………。」


「研吾が退いてくれないと俺、研吾の上に座っちゃうよ?」


「…いや、どくよ」


「おう」


「やっと座ったか、じゃあこれからホームルームを始める。学級委員。」


 僕たち二人がちゃんと座ったのか確認してから先生が話し始める。


「起立ー気をつけー礼」


『おはようございます。』


「着席」


「で、今日の連絡はあったけ?あっそうだ、進路希望調査明日までだからな。

 ちゃんと提出するように、これで基本的に進路決定しちゃうからしっかり考えてから出せよ、まぁ連絡はこれくらいだわ。

 次の授業あるし号令は省略する。

 じゃあ授業寝ないように頑張れよ〜」





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