1話 彼女と出会う前に…
「けんご、今日は雨降るから傘持って行きなさいよ!!」
僕はまだ走馬灯を見ているのだろうか?
部屋のドアを開けている母さんがまだ若い。
それにまだ実家暮らしだし、高校生の時の制服が掛かってる。
別に夢の中でもいい。
夢の中では彼女が幸せでいて欲しい。
たとえもう顔も名前すら思い出せなくても。
「うん、わかったよ母さん。」
僕は力強く傘を握りしめる。もう2度と間違えないように。
◇
学校に着いたのはいいけど、今俺は何年生だろう?
適当に側にいる先生探して話しかけてみるか?
いや、でもそんなことを聞いて不審者に間違われたらどうしよう…
「おい〜
どうしたんだよっ研吾、下駄箱の前でうろちょろして。」
誰だろう?
the爽やかイケメンって感じの人に話しかけられた。
名前呼ばれてるってことは知り合いだよな、どうしよう思い出せない。
僕ほんとに何にも覚えてないんだな。
とりあえず返事しといた方がいいのか。
「やっやっほー?」
「ん」
「それで?どうしたんだよ下駄箱の前で、しかもここ1年の下駄箱だし1年になんか用でもあるのか?」
「いやっ特に…ないけど…」
なんかすごい見られてるやっぱり怪しかったかな?
でもたくさん話してボロ出すよりいいよね?多分…
「…なんか今日、具合でも悪い?」
なんだ、心配してくれてただけだったか。心配してくれるってことは僕、この人と仲良かったのかな?
仲良かった人まで覚えてないとかなんか申し訳ないな。
「大丈夫‼︎えっと心配してくれてありがと!!」
「ふふん。当たり前だろ?親友なんだからな。」
やっぱり彼とは仲良かったんだ。
彼なら僕のクラス知ってるかもしれない!!
「あのさっ」
「あぁもうこんな時間だ‼︎早く教室入らないと遅刻にされるっ研吾走るぞ!!」
「へっ!?」
彼が手首を掴んでひいてくれたおかげですんなりクラスに入れた。
どうやら彼と同じクラスだったらしい。クラスに入った直後チャイムが鳴った。
「ふぅ ギリギリセーーーフ」
「セーフはセーフでもギリギリだ!
北川はいつもそうとして、今日は鈴木も遅刻ギリギリか…明日からはしっかり早めに着くように。わかった?」
「いや、森ちゃん先生聞いて!
俺、今日はいつも森ちゃん先生に言われてるから、そろそろしっかりしないとなって思って、ちょっとだけほんのちょっとだけ、気持ち早めに学校きたんだよ?
でもさ〜1年の下駄箱で立ってる親友いたらほっとけないじゃん?でしょ?
つ ま り、俺悪くないのよ」
彼が、いや北川くんが胸を張り誇らしげな顔をしている。
「…えー二人とも席につけ。」
先生があからさまにめんどくさそうな顔をする。
「ちょいちょい俺無視されちゃった?」
「はぁ、じゃあ明日からも早く来るように」
「はーい」
えっと僕の席はどこだろう?
席が残ってるのは、窓際の前後の席か…前と後ろ2択だな、うーんとりあえず前の席座るか。
後ろにの席に北川くんが座る。
よし!どうやら僕は2択で正解を引いたみたいだ、良かった。
「はぁ 北川、鈴木ちゃんと自分の席に着け」
「ういっす」
北川くんがうざい返事をする。
えっどういう事?
ここ僕の席じゃなかったって事?
…じゃあなんで北川くん何も言わなかったの?
何をしたいのこの人?
「研吾座らせて」
「……………。」
「研吾が退いてくれないと俺、研吾の上に座っちゃうよ?」
「…いや、どくよ」
「おう」
「やっと座ったか、じゃあこれからホームルームを始める。学級委員。」
僕たち二人がちゃんと座ったのか確認してから先生が話し始める。
「起立ー気をつけー礼」
『おはようございます。』
「着席」
「で、今日の連絡はあったけ?あっそうだ、進路希望調査明日までだからな。
ちゃんと提出するように、これで基本的に進路決定しちゃうからしっかり考えてから出せよ、まぁ連絡はこれくらいだわ。
次の授業あるし号令は省略する。
じゃあ授業寝ないように頑張れよ〜」
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