子育て幽霊って話読んだ事は無いけどマジで泣くらしいよ。マミー、…どんな姿になってもどんな時代でも母親が子を思う気持ちは変わらんなぁ…!


永倉が話し出した。恐ろしい空気を出す為、


普段より低い声で、蝋燭の光を母に近付けて。


「ある夜、飴屋の戸を叩く音がするので


店主が出ると青白い顔をした女性が


『飴を一つ売ってください』


と言いまして買いました。次の日も女性はやって


来て飴を一つ買って行きました。女は毎晩飴を


買いにきましたが7日目の翌朝、銭箱の中に仏事に


使われるしきみが入っていた為不審に思った店主は


その夜、再び飴を買いに来た女性の後をつけ


ました。すると、墓の前で女性は姿を消しました。


まさか気づかれたかと焦っていましたが、


少し経つと赤ん坊の泣き声が聞こえて来ました。 


墓を掘り返すと棺の中には女性と死体と未だ


生きた赤ん坊がいました。女性は赤ん坊を育てる為


三途の川の渡し賃六文銭で飴を買い、お金が無く


なったらお供えのしきみの葉をお金に替えて飴を


買っていたのでした。その後、店主はきちんと


女性を埋葬し戻し、棺には余る程の飴を入れて


上げました。赤ん坊は店主が引き取り育てることに


したそうです。めでたし、めでたし」


長い話が終わり、永倉が息を吐いた瞬間…


「何だよ全然怖くねぇじゃん、逆に感動もの


だわ!」


「店の人優しいけども墓は掘り返すな!」


其々から言葉を投げてくる。永倉は耳を塞ぐ。


「あー、煩い!俺も含めてお前ら怖い話しねぇ


じゃん! 言ったよな、感動話でも良いって! 


話したとしても定番のやつばっかじゃん、なんか


無いの? 俺らが知らない怖い話は」


うーんと、全員が首を捻る。この男共は武士として


人を殺しながらも心を震わせる恐怖の話を知ら


なかったのだ。


「俺は沢山知ってますよ」


そこで名乗りあげたのが何と伊吹だった。


一番その系統の話には足を入れなそうな奴なの


だが。腐っても妖護屋だ。武士達以上に暗く澱んだ


話を脳に、心に染み込ませている。期待はする。


「お、聞かせてくれよ」

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