21話 仲間に悩みを打ち明けました
「――よし、そろそろまとめるか」
俺とノエルはオルガたちと合流し、ノエルの戦力アップの方向性をみんなで考えた。
少しノエルは気恥ずかしそうにしていたけど、やっぱり一人で悩んでいるより大人数で悩んだ方がよかった。
思っていた以上にみんな積極的に意見を言ってくれたからな。
だから、そこからノエルの目標である『みんなを守れる騎士』に合った意見を絞っていくのが大変だった。
でもこれは嬉しい誤算で、ノエルも「ありがとう」と感謝していたほどだ。
きっと、こんなにも自分のことを考えてくれるとは思っていなかったんだろう。
俺だって予想より遥かにみんなが話し合いに参加してくれてビックリした。
てっきり二、三十分もかからずに話し合いは終わると思ってたけど、まさか二時間もかかってしまうとは……。
そして、今からようやくまとめに入る。
「まず、ノエルのことをここまで考えてくれてどうもありがとう。俺が感謝するのもおかしいけど。……さて、ここからがまとめなんだけど、ノエルは防御力に特化した騎士を目指すことになった。このことに誰も異論はないな?」
話し合いに参加してくれたみんなの顔を見回すが、誰も首を横に振ることはなかった。
彼女たちの中で反対する理由が見つからないということだ。
強いて俺から言わせてもらうなら、強力な攻撃手段を一つ身につけたい。
どれだけ防御力に特化しても、攻撃手段が無ければ守れるものも守れないときがやってくるはずだからだ。
まあそれは追々話せばいいとして。
「次に防御力特化の騎士になるための方法だが、ノエルが隠してた膨大な魔力で複数の魔道具を使用する……でいいな?」
「オレ様はそれでいいと思ってる。身体強化以外の魔法を極力使わないようにしている騎士としての在り方からは離れてはいるがな」
「そこら辺はどうだ? ノエル」
俺は勿論、オルガと同様の意見だ。
だが、それを良しとするかはあくまでもノエル自身。
判断はノエルに委ねる。
「私は騎士の家系で、魔道具を使うなんて考えたこともなかったです。きっと魔道具を使う騎士になると言ったら、お父さんやお母さんに怒られると思います。でも私はみんなを守れるようになるならそれだけで……満足です」
そう言うノエルの瞳には確かな覚悟が宿っていた。
どうやら、迷いはないようだ。
話が少し脱線してしまうけど……。
「何でこんな凄い魔力があること黙ってたんだよ。使わなかったら宝の持ち腐れじゃないか」
「まったくだな。それに魔法の練習をしたことがないから魔法が使えないときた」
「ご、ごめんなさい……。でも、これからは魔法も使えるようになろうと思っています。だから、みんなにも協力してほしい……です」
「そんなもん頼まれなくても協力してやるし、俺のとっておき『ファイアインパクト・廻』を――」
「――やめろ。ノエルの魔力量であの技をバカスカ撃たれたら勝ち目がない」
冗談のつもりだったのだが、オルガが遮ってきた。
まあ確かに、ノエルの魔力量での『ファイアインパクト・廻』は恐ろしすぎて考えたくもないな。
それに防御力を高める魔道具を使えばほぼノーリスクで使えるようになるかもしれない……。
俺とオルガが戦々恐々としていると。
「じゃあじゃあカレンに教えてほしいなっ! あの技カッコいいなぁって思ってたんだぁ」
「ふむ。なら私も立候補しよう。他の魔法に応用できるかもしれない」
「わ、私はいいかな。痛そうだったから……」
カレンとテレシアが悪ノリしてきた。
シノアは……うん。そのままでいてくれ。
別に教えるのはいいんだけどさ。
でも今は。
「『ファイアインパクト・廻』の話を広げようとするな。何のために集まっているのか忘れたのか?」
「で、でも……『ファイアインパクト・廻』が使えるようになったら強くなれると思うから、私も……」
「ノエルもかよ。確かにあの技をリスク無しで打てれば攻撃面に不安は無くなるけども……」
「じゃ、じゃあ私にも教えてね」
『ファイアインパクト』は俺のオリジナル技だったのに、こんなにも使いたい人が出てくるとは思わなかった。
まあ、俺は新たな『ファイア・インパクト』を編み出しつつあるんだけどな。
いや、そうじゃなくて。
「話が脱線したから元に戻して、最後。ノエルは防御力を高めるため、大盾を装備する……んだけど、持ち運びが難だよな。それにノエルは体の線が細いから大盾を扱えるだけの筋力が欲しい」
「だな。それはオレ様も思うが……」
「どうかしたか?」
「いや? 特に大したことはない。大盾を構えつつ『ファイアインパクト・廻』が撃てたら敵なしだなと思っただけだ」
「『ファイアインパクト・廻』の話は終わっただろ。わざわざ蒸し返すな」
オルガの言ってることも分かるけども。
だが、みんな忘れていないだろうか。
『ファイアインパクト・廻』を使ったら大火傷を負ってしまうことを。
……忘れていそうだな。
そうじゃなかったら覚えたいとはこれっぽっちも思わないだろう。
その点、シノアはしっかりしていたな。
それにしてもこの話し合いの中で、俺たちの仲が深まったような気がする。
そう考えると、アナベルはもったいないことをしたのではないだろうか。
というか、アナベルのやつ来るの遅すぎないか? あいつ今、何やってんの?
そう思っていたときに。
「すまないなみんな。話が長引いてしまってな。ここに来るのがこんな時間になってしまったよ」
時間に厳しいはずのアナベルはたった今、俺たちの前に姿を表したのだった。
まったく、重役出勤とはいいご身分だな!
俺は内心で悪態つくのだった。
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