第75話
「ふざけるな、お前」
「良いだろうて」
加咬弦が却下しようとした際に、割って入って来たのは統道旭だった。
「あ、旭、何を」
「…弦、これは好機よな。相手は勝つつもりであろうが、連戦連勝すれば奴のスキルを剥奪出来、弱体化が狙える、この手を逃す気はないだろう?」
小声で加咬弦に耳打ちする。
「…分かった。俺のスキルは二つだ」
「そうか、では三戦を希望する。そしてディーラー。この勝負にて賭けたモノが払えなかった場合はどうなる?」
黒隠はカードを配り終わって休めをした状態で待機していた。
「んぁ…んん?そりゃ、別のモンが盗られるんじゃねぇの?」
「では、もし三勝した場合、奴の命を貰おう」
「ふざけんな、罷り通るかよ、そんな事」
「いいや、良いだろう」
またしても統道旭が割って入る。
「おい!」
流石の加咬弦も彼女に苛立ち声を荒げてしまう。
「但し、同意したのは三戦した部分のみよ、この賭博場に居る以上、妾も傍観するつもりはない、弦に妾の命も担保として貸そう」
そう言った。
弦は彼女の言葉に思考を巡らせる。
「(これが通れば…旭、なんて事を考えるんだ)」
他者の命の貸し借り。
これが出来るのだとすれば、少なくとも、加咬弦が負ける事は無くなるだろう。
何故ならば、相手は黒隠であり、その上司は統道理事長だ。
孫娘の命を迂闊に奪う様な真似は出来ない、だとすれば、勝負は敗退しか手が無くなる。
「(強気に出過ぎたな、旭様の命が使用されてしまえば…いや、出来る筈がない)」
黒隠は冷静だった。
「はぁん。まあ確かに?スキルが無い以上は別のモンを賭けなきゃだけどよ。同意してんのなら、他人の命を使っても良いぜ…もちろん、戦う相手は固定してるし、応援とかアドバイスは禁止だけどなー」
あくびをしながら、羅刹がそう告げた。
これで場は整った。
加咬弦は配られたカードを捲り、数字のそろったカードを捨てていく。
その間に、黒隠はカードを纏めながら加咬弦に話をする。
「小僧、お前は安全圏を得たと思っているだろう?…最初に旭様の命を使えば、この私が勝負を投げる他道が無いと」
ぱらり、とカードを開く。
そして片手でカードを振っていき、同じ数字がカードから零れ落ちていく。
「認識を改めると良い、貴様の手札は既に知っている。移動系のスキル、そして、死体を作るスキル…仮に旭さまの命を私が奪ったとして…お前のスキルを奪えば、何も問題は無い」
「…ッ」
表情には出さないが、加咬弦は内心焦っていた。
「(コイツ…旭の命を奪った末に、俺のスキルを奪い、使用して旭を復活させるつもりかッ!?)」
そんな事、出来る筈がない。
加咬弦のスキルは自身が良く知っている。
あくまでも修復した死体を動かすスキルだ。
だから、死んだ体を修復しても魂が無いままに操るだけになる。
実際に生き返るワケではない、だが違う。
問題なのは黒隠の認識だ。
「(コイツは勘違いをしている。だからこそ、旭の命を最初に賭けても勝つ気だッ)」
「(無論、ブラフだ。奴のスキルの情報は承知している。だが私が敢えてそう言ったのは、旭さまの命を最初に出しても勝つ気で居ると言う事だけ…それで十分だ)」
「おらお前ら、アンニョイな顔してねぇで、さっさと賭けるモノを宣言しろよー」
のんきにそう羅刹が言った。
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