第72話
空間が暗闇から人工の光に侵蝕されていく。
一瞬まばゆい光が目に入り、加咬弦は目を瞑った。
そして、耳元から聞こえる人の騒めきと、ゲームの様な電子音。
改めて、加咬弦は目を開くと、夜の街が周囲に展開されている。
「なんだ…ここは」
周囲を見渡す。
人の姿を見かけるが、その人物は、人と言うよりかは影に近しい。
大通りを埋め尽くす人の波、その大半が『人影』であった。
「弦」
人影を掻き分けて顔を見せる、銀髪をカチューシャで止めた傲岸不遜の少女が現れる。
「旭…これは、羅刹のスキル、だな」
確認する。
双蛇羅刹が発動させていた様な様子ではあったが、万が一を考えて、このスキルによって支配された空間が、黒隠によるものか伺う。
「それはあり得ん…が、奴がスキルを新しく所持していれば、話は別だがの」
そう告げた時だった。
人込みを掻き分けて、此方に迫って来る背の高い黒い外套を羽織る男がやって来る。
「なんだ此処は、スキルが使えん、お前の仕業か」
声に怒の色を宿しながら、黒隠が睨む。
その髑髏の面を確認すると、統道旭が笑みを浮かべながら黒隠に向けて手を伸ばす。
「貴様の移動する権利を失効する」
そう口に出して告げる。
初めは狼狽する様を見せた黒隠。
しかし、その言葉を確かめる様に足を動かす。
すると、彼女の言葉など意味を成さず、普通に歩く事が出来た。
「(妾のスキルが効かない?)」
「(権利?…旭様のスキルは『人間失格』、知性レベルを下げるスキルの筈…効かないのは、自身がスキルを使役しているのに使用が出来ない事で証明済み…恐らく、別のスキルを所持している可能性がある…移動する権利…失効、相手の行動を限定的に無効化させるスキルか?)」
考察を始める黒隠。
その時だった。人込みを蹴り飛ばしながら接近してくる。ツインテールの少女の姿が其処にある。
「おらっ!退いた退いたッ!お、居たなお前ら、んじゃあ…んんっ!よーこそッ!あたしちゃんのあたしちゃんによるあたしちゃんの為だけのワンダーランド『
『闇遊戯』と聞いて、警戒する加咬弦と黒隠。
加咬弦も彼女のスキルを体験するのは初めてなのだが。
「ちなみに、この空間内じゃあ暴力とスキルの使用は禁じてる、それと、あたしちゃんのスキルだけど。あたしちゃんはスキル上じゃディーラーの立場に着くぜ」
加咬弦は、双蛇羅刹の姿を目視しながら、彼女に聞く。
「お前…なんだよ、その姿」
双蛇羅刹の格好。
赤いレオタードに網タイツを着込み、頭にはうさ耳のヘアバンドを装着している。
その姿は、バニーガールだった。
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