第70話

「どうする?」


銃声が止んで一時間が経過している。

別荘の屋敷に居座る加咬弦は二人にどうするか聞いた。


「銃火器が有効とはな…折角の隠れ家も、耐久値は一般と同じだからの」


「なーなー、このまま殴り合いにもつれ込まねぇのかぁ?」


拳を固めてジャブをするツインテール姿の双蛇羅刹。

銃声が聞こえてからか、双蛇刹那が引っ込んで、代わりに彼女の人格が顔を出していた。


「駄目だ…銃火器を使用している連中とは戦えない」


そう加咬弦は告げた。

この中で対抗出来る人間がいるとすれば、それは統道旭だろう。

しかし、統道旭のスキル『無知無能オール・オア・ナッシング』はどういったスキルであるのか未だ分かっていない。

スキルが進化したばかりで、使い勝手が悪く、協会に正式にスキルを確認して貰っても無い為に、効果範囲、及び対象人数が分からない。

こうなってしまえば、対象者を選定して権利を失効している間、対象外である人間から攻撃されてしまえばそれで終わりだった。


「現状、俺たちに残されている道は二つ…駄目元で逃げるか、駄目元で戦うか」


二つの選択肢を掲げる。


「この屋敷から外へ出て、俺のスキル『外界からの指し手』を使って出来る所まで逃げる、但し、空間の範囲が狭くなる可能性があるから、遠くまで移動する可能性が低い」


『外界からの指し手』は、その場に滞在している物体を移動するスキルだ。

但し、逃げる場合はこの屋敷を出た状態で無ければならない。

そして、加咬弦のスキルは外で使った事が一度も無い。

だから外に出た状態でどこまで移動出来るかが分からないままでいた。


「もしも戦うのなら…籠城するしかない。逃げながら戦うのは不利だ。相手は銃器を使っているからな」


加咬弦はそう言った。

籠城していれば、機動隊員が部屋の中に入って来た場合、銃火器の振り回しが難しくなる。

その隙を突いて戦闘を行えば、良い所まで行くかも知れないが…それでも、分が悪い。


「…だから、此処で俺たちの手を確認しておきたい」


加咬弦は双蛇羅刹の方を向いて、彼女に伺う。


「お前のスキルはなんだ?教えてくれ」


彼女のスキルはまだ誰も知らない。

『ジェミニの悪魔』、それ以外にも、双蛇羅刹には二つのスキルを所持している。

そのスキルは協会には通達しているが、まだアーカイブには登録されていなかった。


「あたしちゃんのスキルか…えーっと」


答えようとして。

微かに、地響きの様な音が聞こえる。

それは、地下から穴を掘っていた機動隊員がトンネルを開通した音であり。


「ッ」


辺りが急に暗くなる。

そして、暗闇の中から目が開いた。


…トンネルから這い出て来る、髑髏の男。

黒隠が建物に侵入すると同時にスキルを使用していた。

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