第59話
結局。
加咬弦と統道旭に加えて、双蛇羅刹も共に移動する事となった。
バス停に降りて、三人が向かった場所は湖畔が近くにある木製の屋敷だった。
「うぉお!広れぇ!!なあなあ、あれ、統道の家か?!」
「うむ、如何にも、と言っても、大きさで言えば十三番目、贅沢度で言えば二十四番目、隠れ家としては一番目の別荘地だがな」
「うぉお!!なんだか良く分からねぇけど凄いのだけは分かったぜっ!ひゃっほぅ!!あたしちゃんが一番乗りだぁい!!」
「統道…、この別荘は本当に、隠れ家として使えるのか?」
加咬弦はそう言って彼女に聞いた。
首を縦に頷いて、うむ、と唸る統道旭。
「この屋敷には迷宮遺物が秘められておる、一度起動すれば、霧が掛かり、この別荘へ足を運ぶ者を霧に化かす事が出来るのよ」
「成る程…、つまりは相手が目的地に辿り着けない迷宮遺物を使用しているって事か…」
これならば、常人の目を欺く事くらいならば容易だろうと、加咬弦は思った。
しかし、同じ迷宮迷子であればどうだろうか?索敵能力を持つ者に関して、この迷宮遺物は作用するのか、と不安を覚えてしまう。
「さあ、入るとしようか、美味い馳走などは出せぬが…と言うか、食料自体置いてないと思うがな」
「マジかよ」
「先程も言うたが、この屋敷はごく一部の人間しか知らんのだ。他に知りえる人間が居るとすれば…まあ、爺様くらいであろうがの」
「爺さん…統道理事長か」
あのオッサンの顔を思い浮かべる。
どうにも加咬弦に対して恨みを持っている様子だ。
で無ければ、わざわざ私設部隊を用意して攻撃してくる筈がない。
「時間の問題じゃないか」
「うむ、まあ、考えても仕方があるまい、少し休憩した後に、食料でも買いに出ようではないか」
そう言って別荘屋敷へと足を踏み込んだ。
部屋の中は薄暗い、電気が通っているのか妖しいが、ブレーカーを上げて電気を入れると辺りは明るくなった。
「うおおお!!これ、スゲェ!!ソファだぁ!!わっほい!あたしちゃんの寝床な此処!!」
思いきりジャンプして、ソファを跳ね上がる双蛇羅刹。
楽しそうで何よりだが、これから加咬弦が追われる立場である事を理解しているのだろうか。
「なあ、羅刹」
「あ?なんだよ、言っておくけどこのソファはもうあたしちゃんのモノだかんな。お前は床に這いつくばってくつろぎながら珈琲でも飲んでろ」
「テメェ…」
苛立ちを覚えるが咳き込んで気持ちを入れ替える。
取り合えずは、双蛇羅刹と話しても拉致があかないと思ったのだろう。
「刹那の方を呼んでくれ」
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