第57話
『
肉体を飴に変える事が出来るスキル。
このスキルを所持する飴村柔は、天吏尊が抵抗した場合、スキルによる発動を対策する事が出来る能力者として採用されたものだ。
アーカイブで確認した天吏尊の『虚飾掌握』は五指で構成された腕を動かして捩じったりモノを動かしたり出来る。筋力値は天吏尊に依存しており、戦闘能力は低いとされていた。
しかし、こうして対峙して分かる、天吏尊の万能性の高いスキル。
攻防においてはまさに優勢と言わざるを得ない。
無論、それは他の人間が相手であればの話だ。
「(銃撃が効かない事は百も承知、ならば当たらない事を前提で銃撃を発砲、手数の内、弾丸を受け止める事で行動を制限させる)」
弾丸を発砲しながら接近。
天吏尊に近づくと同時にマガジンが切れた。
再装填する暇は無く、天吏尊に近づき刃物を突き出す。
「お兄ちゃん、あの女を選ぶんなら尊は絶対に許さないから…何処までも追い掛けて、お兄ちゃんを捕まえてあげる…尊のスキルは、そのために……」
虚飾掌握が飴村柔の腕を掴んでへし折った。
瞬時に肉体を水飴に変えて攻撃を無力化。同時に腹部を水飴化させると、飴の部分を意識的に動かして、天吏尊に向けて突き刺した。
硬質化した飴細工の針が、天吏尊の脇腹に突き刺さる。
血を流して彼女はそこで初めて外界からの刺激に反応した。
「くッ」
「流石に怪我をすれば反応するか…悪いが、無力化させてもらうぞ」
腕を鞭の様にしならせて、天吏尊に向けて振るう。
その腕先を受け止めようと『虚飾掌握』が鞭の先端を掴むが、飴が分離して虚飾掌握が掴んだ部分だけが切り離され、残る部分が天吏尊の衣服に染み込む。
「『
染み込んだ水飴が手足に移動して、袖の手首部分に飴が硬質。
簡易的な手錠となって彼女の動きが鈍くなる。
「気持ち悪いッ」
飴のネバネバに嫌悪感を過らせる。
「俺に向けて言ったようで凄いへこむな…」
その様な感想を残して、手を振った。
手首から先は水飴になって、遠心力によって離れた水飴が天吏尊の体に付着して、もう片方の手首も固定させてしまった。
「くっ、こんなのッ!」
無理に動かそうとするが、天吏尊の力では飴を破壊する事は出来ない。
「(無駄だ、俺の水飴には俺の黒粒子を混ぜてある。だから普通の飴と同じ粘着力と硬質性じゃないんだ…悪いがこのまま、死んでもらうぞ)」
そうして完全に自由を封じられた天吏尊に拳銃を向けて。
そこで、飴村柔は首を傾げた。
「(そう言えば、コイツ…スキルを途中で発動していない?)」
その思想から、彼女のスキルを思い出す。
そして、彼女がスキルを使えない、…いや、使わない理由を想定した。
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