第25話

「はぁ…」


結局、その二人の積極的な質問攻めに面倒臭くなって寝てしまった。

黙って目を瞑るだけだったのだが、案外それが効いたようで、再び目を開けてみたら、両隣には大人しく寝息を立てている二人の姿があった。


「…にい、さん」


「やめ…て、下さい…そんな、所」


どんな夢を見ているのか。

天吏は涙を流していた、譫言から察するに、天吏帝の事を思い出しているのだろう。

顔を真っ赤にしている双蛇は一体どんな夢を見ているのか、身を悶えている様を見るに何か痴漢でもされている夢を見ているのだろうか。

どちらにせよ、俺は二人に介入するつもりはない。

その夢を起こして聞く気も無いし、教えて来ても反応に困る他ない。


「あー…疲れた」


一言、口から出て来る言葉はそれだった。

後は自分も意識を落として寝てしまえば、明日の朝には解放されているだろう。

そう思って目を瞑っていた時だった、不意に、物音が聞こえた様な音がした。

微かに目を開いて見ると、俺は二人を起こさない様に顔を上げる。


「…なんだよ、金鹿か」


急に物音が聞こえて来たから、思わず驚いてしまった。

ベッドから覗き込む様に此方を伺う、金鹿の顔が其処にあった。


「どしたのー?そんなに疲れた顔してさ」


むひひ、と笑みを浮かべて来る。

彼女は知る由もないだろうが、結構、苦労しているのだ。


「…疲れてるよ」


俺は苦笑した。

こんな状況下で楽しめたら良かったんだが。


「お前の方がまだマシだったよ」


この手錠に繋がれている相手が、どちらか一方でも、金鹿冥慈であれば、この気苦労は多少解消されただろう。


「私?えへへ、嬉しいなぁ」


ベッドに頬ずりする様な姿勢で彼女が此方を見ている。


「んあ…」


すると、俺の声に反応してか、双蛇が半ば眠りから醒めて無い様子で起きて来る。


「んだぁ?…お前、誰と話してんだよぅ…」


寝惚けているのか、双蛇はそう言って聞いて来る。


「金鹿だよ、ほら」


俺は首で金鹿の方を指す。

金鹿は能天気にも手を振って双蛇に挨拶をしている。


「んん、どうも」


ペコリと頭を下げる双蛇は、再びベッドに顔を埋めた。

ぐぅぐぅと寝息を立てる双蛇を見て、息を吐いて笑みを浮かべる。


「…ん?」


頭が段々回らなくなって来る。

もうじき、眠りが訪れるのだろう。


「悪い、金鹿…眠いわ」


このまま、眠ってしまいそうだと俺は瞼が落ちそうになる。


「そっかぁ、残念だなぁ…うん、じゃあね」


そう言って、金鹿は仕方ないと言った様子で手を軽く振った。

俺は目を瞑る、意識は瞬時に消え失せる。

夢の中へと旅立ち、後は、朝がやって来るのを待つだけだった。



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