第22話

「これ…」


双蛇刹那が手を上にあげると、必然的に手錠が上がり、その手錠で繋がれた俺の手も上がる。


「お前の悪魔がやった事だ」


あいつ、状況を悪化させるだけ悪化させて、本体に任せやがった。

いや、最後まで責任を取れと思っても、アイツが面白おかしくしてしまうだけだから、フェードアウトして貰った方が良かったかも知れないな。


「取り合えず、今日はあれだ。このまま大人しくするぞ」


俺は立ち上がる。


「大人しくって、何処に行くのかな?お兄ちゃん」


「決まってるだろ、病室だよ」


「誰の病室、ですか?」


双蛇刹那が聞いて来る。

誰の病室って、女性の病室にお邪魔するワケにはいかないだろう。

だから、仕方が無い事ではあるが、俺の病室で待機する他ない。


「俺の病室だ」


「え?お兄ちゃんの病室?」


嬉しそうに反応するな。


「えっと…それは…うぅ」


恥ずかしそうに双蛇刹那が顔を真っ赤にさせて俯いた。

別段、恥ずかしい事なんて無いだろうに。

ただ、病室で待機するだけの事だろう。

…あぁ、そう言えば、双蛇刹那は俺の事を惚れているとか言っていたか。

だとしたら、好きな人が住んでいる場所に入るって言うのは、少し刺激が強いかもな。


「じゃあ、俺の病室以外に、何処か行きたいか?」


「え?なんで、お兄ちゃんの病室が良い、お兄ちゃんと一緒」


お前には聞いてねぇよ。

双蛇羅刹は握り拳を口元に添えて考える素振りをする。


「…だ、大丈夫、です。あの、加咬さんの病室に、行きます」


勇気を振り絞ってか、かすれた声で彼女が告げると、取り合えずはそれを了承した。


「じゃあ、行くか」


こうして、手錠に繋がれた三人は俺の病室へと向かう。

と言っても、俺の病室は何ら面白いものはない。

ただ皺になったベッドシーツに、通信制限がされたスマホと充電器しか置かれていない。

後は…あぁ、あれもあったな。そんな事を考えながら、病室へと入る。

そして、彼女たちが見るのは、殺風景な病室だ。

真っ白な部屋の中には白い棚とベッドしかなく、棚の上にスマホが置かれている。


「すぅ…はぁ、お兄ちゃんの匂いがする」


「…そうか」


普通に深呼吸していたな。

なんだか、変な気分だ、出来る事なら、なるべく人前でそれはして欲しくない。


「あぅぅ」


モジモジと、双蛇刹那が恥ずかしそうにしていた。


「あの、えっと」


そして、湯気が出そうな程に顔を真っ赤にさせて、彼女が下腹部に手を添える。


「すいません…すいません、あの…私、えっと…」


そして涙を流して彼女が大変な事を言い出した。


「トイレに、行きたいですぅ…」



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