第21話

「で、スキルを使って取りにいくって?」


何故手錠を持っているのかと問い質してみれば、それは彼女の所持するスキルを使用した為らしい。

そこで、アーカイブでも閲覧禁止となっている彼女のスキルの一部分を知る事が出来た。


スキル名『虚飾掌握』。

系統は移動大系。詳細は、認識不可能の手を操る事が出来る能力らしい。

彼女と同じ握力と腕力を持つ手は、手動と自動に選択が可能であり、自動状態で『虚飾掌握』を発動した場合、自身が欲する道具やアイテムを捜索、自分の所まで持ってきてくれる。

但し、それを使用した場合、『虚飾掌握』がアイテムを取りに行く間は無防備となってしまう、なので能力の使用が不可能状態となるらしい。


そのスキルを使用して、第三の手として活用したり、遠距離にある手錠を回収したりと、使い勝手の良い使用をしているのだとか。


「それで取りに行くのに一日は掛かるのか…」


これ、病院の人になんて説明しようか。

いや手錠なんて物騒なものを持っていたら、普通に通報されるか。


「…隠すしかないか」


俺は鬱気味な視線を天吏に向ける。


「お兄ちゃんごめんなさい、少し過激過ぎたよね、ごめんなさい、お兄ちゃん」


涙目を浮かべ、自分の非を認める。

その涙が嘘であったとしても、もう過ぎてしまった事であるから、仕方がないと無理やりにでも納得する他ない。


しかし、不可解なのは双蛇の方である。

俺は片腕を上げて双蛇の方を見る。

奴は呑気にサンドイッチの具材を分解してパンズを箱に見立てて弁当を作っていた。


「ん?なんだよ、あたしちゃんのサンドイッチだぞ、あげないかんな」


「いらないよ…」


こいつはまったく反省していない。

スキルのせいではあるが、それでも苛立ちが収まらない。


「カルシウム足りてねぇんじゃねえの?」


「心を読むなお前は」


「え?」


と、驚きの表情を浮かべる天吏。

その視線に向けて双蛇が顔を向けると。


「へぇー、お前」


その心を読んだのか。


「本当は兄の事なんてどうでもいいのか」


表情を真っ青にして、天吏が俺を跨いで手を伸ばす。

そして天吏の両手が双蛇の口を塞いだ。


「いってッ」


俺の手も引っ張られているので、無理な体勢になってしまう。


「それ喋ったらあんたの口を裂いてあげるからッ」


必死の表情。

悪魔ですら涙目になる気迫。

首を縦に振って喋らない事を誓った所で、ようやく手が離れた。


「ひぃん、怖ぇよぉ、生まれたての赤ちゃん悪魔になんて真似しやがんだよぅ…もういい、おうち帰る」


そう言って、羅刹の表情が一瞬だけ無になると。

即座に、体を震わせて顔を俯かせる。

ゆっくりと髪を解いて、顔を上げると、真っ赤な表情をしている刹那の顔が現れた。







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