第19話
「茶ぁオラァ!!」
「何してんだよ!」
売店に入ってお茶を購入したかと思えば双蛇がお茶を思い切り殴っていた。
「何って茶ぁシバいてんだよ」
「そう言う意味じゃないだろッ、中身ぶちまける所だったぞ」
ペットボトルを持って俺は破損してないか探す。
幸いにも、彼女のパンチ程度じゃペットボトルが壊れる事は無かった。
「あ?なめんな。あたしちゃんの拳は世界狙えんだよ」
両腕を構えて、ネコの様な弧を描くパンチを繰り広げる双蛇。
「世界取ってから言ってくれ…はあ、まったく」
俺は溜息を吐いた。
そして売店のイートコーナーに置かれたテーブルに食事を置いて椅子に座る。
「で?今日はなにを食わせてくれるんだ?」
「集る気かよ、…サラダ食うか?」
「サラダ、ハッ、出たよサラダ。女が誰でも彼でもサラダが大好きな草食系女子だと思ったら大間違いなんだよ。あたしちゃんは霞食系女子だぜ?」
「仙人かよ」
霞を食って生きる女子が世界を狙えるワケないだろ。
面倒なので、俺はサンドイッチを渡した。
「新しいの買って来る、それでも食べてろ」
「うわーい、サンドイッチ、ポーカーやろうぜ、サンドイッチ将軍の再現しようぜサンドイッチ将軍」
「しねぇよ」
サンドイッチの語源になった片手で食べられる様な料理を注文したサンドイッチ将軍の真似なんかして楽しくないだろ。
俺は売店に入る、おにぎりでも買おうか、と棚に並べられた黒色の三角の食べ物を手に取ろうとして。
「尊はサラダがいいなぁ」
手が硬直して後ろを振り向く。
白い毛を編み込んだ、天吏尊が微笑みながら立っていた。
「天吏」
「尊って言ってよ、お兄ちゃん」
周囲を見渡して、安堵にも似た笑みを浮かべる。
「今日は、邪魔な人、いないんだ」
「邪魔って」
それは、統道旭の事を言っているのか?それとも、覇締日和丸の事を指しているのか?
「お兄ちゃん、昨日の事だけど…尊、あれでも傷ついてたんだけどなぁ」
俺の方に闊歩して、接近してくる天吏。
俺は後ずさりをして、おにぎりの棚に背中をくっつける。
背中が当たった事で、振動が発生し、おにぎりコーナーのツナマヨおにぎりが棚から落ちる。
それが床下に転がる事は無く、天吏が手を伸ばして、おにぎりを掴んでいた。
「ねえ、お兄ちゃん。妹を傷つけたお兄ちゃんには、罰が必要だと思わない?」
「ば、罰…?」
かちゃん、と。
何か音が聞こえると。
俺の手首に、違和感が覚えた。
手を挙げると同時、天吏の腕も上がる。
鈍色に輝く手錠が、彼女と繋がっていた。
「一日中、ずっと、尊と一緒になる罰」
そう言って、ふふ、と笑うと。
「これじゃ、罰じゃなくてご褒美?」
嫌らしい笑みを浮かべて、天吏尊がそう口遊んだ。
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