第8話


朝食を食べ終えて、俺は病院が付属する運動場へと来ていた。

元々は第一迷宮専門学校の旧校舎である為、中々に広々とした運動場が設備されている。


「加咬弦さん、お疲れ様です。ウォーミングアップをした後、スキルのレベルを測定します」


迷宮探索協会からやって来た役員の女性が言う。

彼女の隣には、護衛会社と契約し、彼女の護衛を務める軍人服を着込んだフルフェイスヘルメットを装着した男性が二名、両隣に立っていた。


「加咬さんが自己申告したスキルを実際に確認します、スキルを駆使しての模擬戦闘を行い、スキルレベルの判定を行います。尚、全ての情報は迷宮探索協会のアーカイブに保管される為、画面の方に同意をお願いします」


俺の前にタブレットが差し出される。

その内容は、今回撮られるであろう動画の肖像権を保護する代わり動画の権利は全て協会が所持する事になると言う内容だった。

同意が必要であると言う事は、同意をしなくても良い事になる。

しかしそうなれば協会はスキル登録をしてくれない。未許可のスキルを所持している事は法に引っかかってしまう。

だから結局、了承する他無かった。

…その後、ウォーミングアップを終えてスキルを使用した模擬戦闘を行う。

それが終わった所で、俺は大量の汗を流しながら床に転がった。


「はぁ…はぁ…」


疲弊が凄まじいが、久々に汗を流したのは清々しい気分だ。

役員の女性はタブレットで報告書などを作成した後、その内容を俺に確認させた。




『外側からの指し手』

加咬弦の所持するスキル。

協会が保持するアーカイブには未登録の能力。

分類は移動大系と判明。スキルランクはB相当。

空間内を盤上として『指し手』が『駒』を自在に動かすスキルと称している。

『指し手』と言う存在が何者であるかは不明。

『駒』に該当するモノは、地面と接合している物体以外を指す。

(柱、壁、地面に打ち付けたモノを除く)

『駒』は移動しているモノも適用外とする。

能力の発動範囲は壁に隔たれた空間内。

静止した物体であれば全てが『駒』として使役が可能。

発動範囲と『駒』の認識条件の緩さからスキルランクをBとして指定する。

また能力の使用頻度に関して、協会側からは魔物を想定した場合の戦闘及び逃走に限り無許可での使用を認可する。



俺のスキルの一つが表示される。

内容を見れば、魔物と遭遇したのみ、俺はスキルを発動する事が許されたのだ。


「お疲れ様でした。今週の登録は以上になります」


役員の女性はそう言った。

また来週か再来週あたり、俺は再びスキル登録をする。

まだもう一つ、俺にはスキルを持っている為だった。

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