第51話 「女」

死んだ…

これが真っ暗闇の世界…

死後の世界…?


気が付くと、目の前に、

ウィンザードがいた。


「…どう?」


「どう、ってなんだ?

お前がウィルを嗾けたんだろ?

これで、人間は皆死ぬ。

お前の念願が叶ったんだ」


「…そうね…」


「なんで、そんな嬉しそうにしねぇんだ…?」


「がはははは、 

てめぇはなんも分かってねぇな、

だからモテねぇんだ…」


「な、イルスどっから現れた…?

死後の世界だからか…

お前もやっぱり…」


「よぉウィンザード、

相変わらず可愛いな。

今夜、どうだい?」


「私、あなたみたいに、

何でも、力で手に入れようとするの、

嫌いなの」


「けっ そうゆうところが、そそるんだが」


「バカ言ってんじゃねぇよ」


「じ、じいちゃん?」


じいちゃんがでけぇ…

てか、俺が小さくなったんだ。


「オーグン 立派になったな」


「おい、オーガスタてめぇ、

孫の前だからって、

イキってんじゃねぇぞ。

おい、オーグンこいつな若い頃」


「わあああ、やめろ、イルス!

まあ、オーグン色々あるんだよ、

お前も分かるだろう」


俺にも、色々あった…

息子や孫が出来たら、

聞かれたくないもの、一つや二つある。


気付いたら、

俺とじいちゃんの目線が並んでいた。

「いい加減にしなさい!」


「はい…」


彼らが大人しくなる、ってことはやっぱり…


「いい、オーグン、

私は確かに、ウィルに道を示した。

だけど、その道を歩き出したのは、彼自身」


「ほっほほ、、 

皆に会って、昔を思い出したのかにょ。

だけど、ウィルに道を示して、

オーグンにも肩入れするなんて、

無責任だにょ」


なっ!


「ティム…てめぇ…」


「フラれた位で、どっか行っちまう、

小心者達には用はないにょ」


「て、てめぇが逆なら、同じことしただろうが!」


「…確かにそうだにょ…」


「精霊王…お前も死んでいたのか…?」


「儂は死んでなうにょ、

お前も死んでないにょ」


「は…?」


「儂らが言いたいことは、

儂らが出来なかったことを、彼女は出来たにょ。

だから、お前も覚悟を決めて、素直になるのだにょ」


「いや、でも義理の娘がそれを許すとは…」


「オーガスタ!

てめぇ水差してんじゃねぇ!

って言いてぇが…

あの女は確かに怖え…」


「オーグン、 

仲間を大事にすること

家族を大切にすること

世界を大切にすること

私は一つしか選べない、と思っていたけど、

あなたなら…」


目の前が開けた。


死ぬ前と同じ景色…

いや、今のは走馬灯なのか…


俺の頭の中で作り出した、妄想なのか…?


これから死ぬのか…


…よく見たら、若干景色が違う…

俺がいるところ、

周りの地面がえぐれている。

黒雲もない…


???

何だったんだ…今のは…


ウィルはふぅってため息をついた。

「それが君の答えかい…?」


ウィルと対面にいた…

視界に入った瞬間、

胸が締め付けられるような、

泣きたくなるような感情…


だが、自然と笑みが出てきた。



そこにいたのはメルサだった。


メルサは抉れた地面を歩いて、

俺のところまできた。


夢?の中で言いたかったのはこの事なのか…

メルサが助けてくれたのか…


「め、メルサ…俺は…」

メルサは俺に近づき、

俺の切れかかった足だけ繋ぐと、

すぐに立ち上がった。


「君の能力は防御としても使えるんだね…

2対1…

形勢逆転ってことかい…?」


メルサは再び歩き出し、

ムーを抱き抱えると、


「いいえ、私たちの魔力はもう尽きましたわ。

二人はまだでしょう?

好きにおやりなさい」


彼女は木陰へ移動すると、

ムーを抱きながら、座り込んだ。


「オーグン…お互い、

女に助けられるなんて、みっともないね」


「ウィル…女の子は強いんだ…俺らより」

「…そうだね

僕らも決着をつけようか」

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