第44話「おちる」

終わった…

御子に抱いてくれって言葉を、

メルサに言ってしまった…


言い訳…

誤魔化し…

謝罪…

弁明…


なにも思い浮かんでこない…


恐怖で、顔を上げることが出来ない。

目をあけて、現実を見る事すらも出来ない…


「な、ななななんじゃにょ!」



また、聞き覚えのある声がする…


俺は勇気を出して、目をあけ

メルサを観ないように、

声の主を辿ると、なんと精霊王。


何故こいつがメルサといる?


恐る恐る、メルサの方に目をやると…


メルサは…


素っ裸だった…


「う、うわ…ごめん」


とっさに、目を手で覆ったが、

メルサの豊満な胸、

種族の差なのか、つるっとした下半身。


それらを、至近距離で見てしまった。


どうしても、俺の息子は反応してしまう。


「め、メルサ違うんだ…」


「………」


メルサから返事がない。


「て、テン頼む、弁解してくれ!」


「………」


テンからも返事がない


「はぁ…何でこんなに男って、バカばっかなの…

気持ち悪い…」

ウィンディの心に刺さる言葉。


「ち、違うんじゃにょ…

こ、これは…」


…?

ウィンディの言葉は、

俺にだけ、向けられたものじゃないのか?


思えば、精霊王とメルサが裸でいるなんて、不自然すぎる。


メルサがこの変態に、転移を頼むため、

裸になったのか…?


そんなことはないだろうし、

そうだとしても、反応が無いのはおかしい…


俺はメルサの身体を見ないように、

視線をずらし、メルサの顔を見てみる。


壁際に立っている、と思ったメルサは、


精巧に彫られた、メルサの彫刻だった…


ホッとして、

身体を見る…


まるで、実物のような身体

俺がイメージしていた身体


美しいを通り越して興奮が…


俺の身体がビンビンに反応する。

 

この変態ジジイ、

メルサの裸を見ているんだっけ、、


なんとも羨まし…


許せない…


俺も欲し…


一刻も早く、撤去しなくては。


壁の彫刻を壊そうとすると、

「や、やめるのだにょ!」


精霊王が身体の前で、

無数の玉のようなものを作り出し、

俺に向けて発射してきた。


ドゴゴゴゴォオン


体中に、とんでもない衝撃が走る。


「それを作るのに、どれだけ苦労したことかぁぁ!

貴様は儂から、すべてを奪う氣かぁあああ!」


ドゴゴゴゴ!


精霊王は容赦なく、

休みなく、打ち込んでくる。


その威力、イルスと同程度…


数千年前の事は、嘘ではないのだと実感した。


彼らはその時代で、最強と言われた魔族なんだと。


だが、御子のおかけで、攻撃の方向が分かる。


怒りに任せて攻撃してくれている、のもあるだろうが、

半分以上は受け流せた。


「はぁはぁ なっ」

土煙が晴れた後、

目の前で、彫刻を壊した。


そう、これは、、自分に対するけじめなのだ。


俺はもう、後ろを振り向かないと決めたんだ。



精霊王は死んだかのように、地に落ちた。

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