第43話 「タツ」

以前までの物語---------



ウィルはヒイヅル国にて、

人間の歴史を知ることを提案された。


オーグン達は後を追うも、

ウィルは修行を終え、

すれ違いで帰ってしまっていた。


御子よりオーグンも修行を受けるも、苦戦する。

メルサはオーグンに、これまでの思いをぶつけようとするも、

オーグンはこれまでの関係を望み、

メルサはオーグン達の元から去ってしまう。


メルサにウィル、大切な仲間達との関係が崩れていくのを、

自分のせいと責めるオーグン。


テンがオーグンに、女の姿で都合よく振舞おうとしていたことを謝る。

オーグンも仲間に相談出来なかった事を悔い、テンにすべて話した。

その後、御子の修行を終えたオーグンはウィルの元へ。



――――――――――――――――――――――――




「ウィルはあっちの人間を滅ぼすつもりだ。

お前ら帰ってどうするんだ?」

俺らは言葉に詰まった。


覚悟していたとはいえ、

こうもはっきり言われると、流石に堪える。


「…ウィルを止める」

答えは決まっている。


「ウィルはお前らの事を思って、

自分が罪を被ろうとしているんだぞ」

御子から人間の歴史を知った。


ウィルが魔族や悪魔の為に、人間を滅ぼそうっていうのも、

分からないわけではない。


「ああ、でもそれは俺らのためじゃない、

ウィルが自分の為にやることだ」


大事にしたいから、自分が矢面に立って、

大事な人を遠ざけておく。


そんなことは大事にしていることではない。

昨日テンから学んだことだ。


「ふっ オーグン、やっぱり変わったな。

あいつには勝てないだろうがな」


「勝つんだ!」


御子はニヤッと笑った。


メルサの事がよぎったが、

彼女の事は聞くことを止めた。


メルサがウィルについていたら…


いや、メルサが決めたことに、

俺は何も言わない。

それこそ、メルサが決めたことだ。


「メルサさんは?」

と思っていたら、ウィンディが聞いた。

俺の鼓動が高鳴る…


「メルサは先に帰ったぞ」


「ちょっと…

何で私たちを、メルサさんは置いて行くの?」


メルサは先に帰った…

メルサは元々悪魔軍側…


ウィルについたって、不思議じゃない…


「ま、まあメルサも、色々考えがあるんだよ」

テンがウィンディを宥める。


「で、問題は、向こうと連絡が取れない」


「か、帰れないじゃない!」


「藍は今やウィルの眷属、

まあ、そう動くだろう。

少し遠いらしいが、心当たりがもう一つある。

そこに送ろう。

彼も転移の能力を使えるから、

お前らの事、気に入ってもらえたら、

元の場所に戻れるかもな」


転移の能力って、そんなにみんな使えるものなのか?


「いつ出発出来る?」




「この魔道具を使い、

向こうの指標へ飛ばすだけだから、

いつでも大丈夫だ」


「ありがとう、大分ウィルに遅れた…もう行くよ」



「ほんとよあんたのおかげで、

大分無駄な時間を食ったわ」


御子に対してもこの物言い、

彼女の強さかもしれない。


「そうか…残念だ…」

御子はまた笑った。


普段あまり笑わないのも、相まって、

とてつもなく可愛い。



「オーグンお前みたいに、女々しいのは嫌いじゃない。

一度くらい、抱いてやっても良かったが

初めてが私なのはあれだろう…

遊びを覚えたら、いつでも来るがよい」


な、なに…

御子が俺と遊んでくれるだと…?


「ちょま…」


「行くぞ」


「御子…俺も一度」

とここで一瞬視界が変わり、


「御子、俺を抱いてくれ!」

転移後、目の前に、

メルサの顔があった。


???


終わった…俺は膝から崩れ落ちた。

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