第39話「柘榴」
●
メルサ編
いつからだろう
自分の感情に押しつぶされそうになったのは
自分の思いを押さえつけるのに
辛さを感じるようになったのは
もちろん助かった面もある
オーグン達を守るために必死で使った術が
オーグンですら手も足も出なかった
鎧の兵士に効いた
妖精王からの助言もあるだろうがそれ以上に
オーグンを失いたくない一心で…
オーグンは私を仲間として扱う
もちろんそうなるまで
様々な苦悩があっただろう
今は私に興奮などしなくなってきた
そして、ウィンディちゃんが現れた
彼女は私に懐いてくれているが
少し複雑だ
オーグンは彼女に興奮する
私より明らかに子供なのに
ウィンディちゃんを庇ったあの行動も
私の嫉妬からくるもの
私は彼女が思うような女じゃない
そしてここへ来た時
オーグンが女性の排尿を見て興奮していた
そしてあろうことか
その女性と二人で修行するのだそうだ
分かっている
オーグンがそうゆう奴だってことも
私を恋愛対象としてみていないことも
無し崩せば性交渉は出来ることも
そんなことばかり考えている自分が嫌になる
精霊の国では裸の私を見たはずなのに
一切触れてこなかった
もうそのような関係性になってしまった
私は何のために皆と行動していたんだっけ
最初は騙すため
次に自分の身を護るため
そしてオーグンを好きになって
オーグンは鎧の兵士に負けたのを
ウィルの事を気にかけているが
私はそんなことどうでもいい
このままの状態でずっと過ごすのだろうか
それは嫌だ
久しぶりに以前来ていた服を取り出した
今までは何ともなかったが
改めて着ると恥ずかしい…
私のこの行為がどう転ぶか分からない
オーグンが理性を失って
私に発情したって良い
それで私とオーグンの関係が変わるのなら
ウィルやテン、ウィンディを
裏切ることになったとしても
私は意を決してオーグンの元へ向かった
オーグンが部屋で一人になるのを見計らって
扉の前に立った
緊張で視点が定まらない
ただ立っているだけのはずなのに
視界が波打っている
ノック…
ノックしなきゃ
震える手でノックした
一回目の感触が無く聞こえていないと思い
二回目のノックは力を入れてしたら響いてしまった
周りのみんなに気付かれていないだろうか…
そんなことを考えていると
中から「どうぞ」という声が聞こえた
私は精一杯アピールした…
だが、オーグンには
一切の反応が無かった
私はもう駄目だと思った
用意した肝心の言葉すら出せず
その場を後にした
気が付いたら森の中で仰向けになっていた
日が暮れていた
肌寒い…
私、ここに何時間居たんだろう
喉がかぴかぴに乾いていた
妖精の森で倒れた時に似たような感覚だった
幸運にも近くの小川があり
喉を潤した
身体に水が入ったとたんに
目から涙が溢れてきた
涙が溢れると悲しみの感情が湧き上がってきた
もうオーグン達には会えない
オーグンは普通に接してくれるだろうけど
私はもう普通に接せれない
そう思うとより涙が溢れてきた
取返しのつかないことをしてしまったのか
このままでは嫌だと欲をかいた事が
もうオーグンに会えない
あの優しくて無邪気なオーグンに会えないんだ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます