第36話 「新天地」


眼の前は滝だった

ちょろ ちょろ ちょろ


トルネード上に流れる少し濁った水


くんか くんか

ちょっと香ばしい様な

鼻につんと来るような匂い


滝の上を見上げてみると


お肉とお肉の間

もじゃもじゃしたジャングル

その奥にこの世に存在するとは思えないほど

不規則な波線

茶色帯びた柔らかそうな

見たことのない物体

お世辞にも綺麗や美しい

と言う言葉は使えない


ただ興奮する


俺が求めていたものがここにある気がする


俺の眼は釘付けだった


すると突然

滝本は上へにゅっと上がっていた

視線もそれに合わせて上へあがると

人間の女性の顔があった


つり上がった目に黒髪

肌は肌色

年齢はウィンディよりは上

雰囲気だけならメルサと同年齢の感じ

服は薄っぺらいが

パリッとしていて丈夫そうだ


そして程よい露出

美しい…


気品と言うか

気高さのようなものを感じる


そうか…


俺は女性の排尿

いや、性器を見てしまったんだ


ここまでじっくり見ているのは

俺だけだった

皆気を使って

その場を離れていた


「見苦しいところを見せてしまったな

まさか、こんなとこに

ズレて飛んでくるとは思わなくてな」


彼女は羞恥を押し隠すような顔をしていた


見苦しいなんて…

とんでもない…


初めて女性の性器を見てしまった

正直思っていたのとは違った

思い返しても美しいとは言えない


だが普段

皆が隠しているところなだけに

背徳感というか神秘的であった

この上ない興奮がそこにはあった


これは不可抗力だ

興奮するなという方が不可能だ


また俺は白い目で見られていた

周りの仲間の視線が痛い


「うむ?」

彼女は俺の膨れ上がったところを

まじまじと見て


「なんだお前経験無いのか

そいつは色々失礼したな

でもなんで指定のところに

飛んでこなかったんだ?」


そんな失礼だなんて…

とんでもない…

あるとしたら礼だけだ


ズレて飛んだ理由

思い返せば藍とか言うやつ

やけくそか適当に飛ばしてたからな


俺は悪くない

ただのラッキーだ

藍…ありがとう…


「名乗り遅れたな

私はここの神社を守る

一宮一族の名は御子

弱き者よ

ウィルからお前達が来るかもしれない

ということは聞き及んでおる」


ピクッと鼻につく言葉


確かに鎧の兵士には負けた

が、この女性にはどう考えても

負ける気がしない


「ふっ 

弱き者という言葉 

解せぬようだな

どうだ?

私と模擬戦でもせぬか」


排尿を見られたから

俺らを消そうって訳か


「ウィルはどこにいる?」


「ウィルからお前達の事

多少聞いている

彼は私に負け

修行の山籠りを行っている

彼は筋が良い

数日もあれば私を越すだろう

で?覚悟は出来たか?」


ウィルがこの人に負けた?

そんなことあるはずがない

だが、女性相手…

手加減してでもやるしかない


「ああ」


と言った瞬間

目の前に刃物状の飛び道具が飛んできていた


瞬きする間もなく

俺の眼は潰された

かに思えたが飛び道具に

紐がついていて返っていった


俺はしりもちをついてしまっていた


足が震える…


前の敗北を引きずっているのだろうか…


情けない…

そんな情けない事誰も

知られるわけにはいかない


手で足の震えを止めて立ち上がった


「弱すぎる

お前らは戦いというものを

まるで分かっていない

隙だらけだ

今まで何回殺せた事か…」


むっ

そんなの言い様では無いのか?

確かに今は少し油断したけど…


女の子だけど少し脅してやろうか

と不意打ちで殴ろうと思い

一歩踏み出した瞬間


目の前には彼女がいて

気がついたら

片手で弾き飛ばされていた


え?…え?

俺は分かりやすいって言われているから

思考が読まれているのはまだ分かる…


でも何で女の子に弾き飛ばされたんだ?


「だから言ったろう?弱き者よ

お前では私の足者にも及ばない」


メルサやウィンディ、テンも唖然としている


「…魔道具か?」


「違う

確かに私達にはお前らのいう

魔道具を作り使う風習があるが

赤子を相手に全力を出すか?」


うっ…ぐうの音も出ない

俺は弱いのか…


「お前はウィルと違って鈍そうだから

私が直々に指導してやろう」


なっ!女性からま、マンツーマン指導!?

しかも秘境を見てしまった子と…


これってそうゆう事なのか


「ち、ちょっと待ちなさい!」

動揺したようにメルサが問いかける

「そうよ!その変態をどうしようと勝手だけど

私達はここに置き去りにされる訳?」

ウィンディちゃん…俺のことはどうでも良いのか?


「お前らはこいつと違い

私の力の正体が解っているだろう

ウィルと同じように山籠りで鍛えるも良し

自分たちの力を伸ばすも良し

街に降りて観光して過ごすも良し

勝手にせよ」


「か、観光!?そんなところがあるの?」

ウィンディちゃんの眼が光る


あれ?ウィンディちゃんも解ってたの…?

俺だけ??

なんも解ってないのは俺だけなのか?


「お前らの世界の事はウィルから聞いた

お前らが魔力と呼んでる物

私たちは気と呼ぶ


私たちはお前らと違って

気を操る事は出来ない

代わりに気を読む事を鍛えている」


「メルサの感知能力とは違うのかい?」

テンが聞く

「ウィルにも聞かれたがお前の事だろう

似ていると言えば似ているが少し違う

相対した感じ

お前のは感覚器官を

より鋭くするのであろう」

「…ええ」

メルサが頷く


「私たちは気の流れ自体を感じる

大気中のも身体のも同じように

だが、それだけの違いだ」

メルサは理解しているようだった

俺にはさっぱりわからない


「それじゃあオーグンはこっちへ

街へは正面の玄関を降りていけば着く」

「そう!テン!行きましょう!」

ウィンディはテンの片手を引っ張り

行ってしまった

俺はお堂の奥へ連れていかれ


メルサは不服そうな顔をしていた



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