第35話「継承」


オーグン視点-----------------



鳳凰の言う通り進むと三角があった

「オーグンどう思う?

何であのウィルが大人しく足止めされてると思う?」


「俺達が置いていかれたのと逆でどこかに飛ばされたんじゃないのか?」

「おいらもそう思っていたんだけど

それならおいら達もそうした方が手っ取り早くないかい?」


「確かに…」

「それであの変態妖精王のこと思い出してたんだけどあいつはおいら達に手を繋げと言って触れながら瞬間移動させたよね?」

「つまり、私達がウィンザードに会ったとき、私達に触れながらじゃないとどこかに飛ばせないから不可能だったってことかしら?」


「うん、だからウィルが足止め食らってる訳ではなく、自らの意思でいるって言うこと」

「ウィンディ、俺らの知る限りそこまでではないと思うんだが、ウィルって人間嫌いなところあるのか?」


「………」

「ウィンディちゃん?」


「メルサさん!

私もメルサさんが知るくらいの感情だと思うよ

イーっだ!」

と俺に向かって話しかけるなアピールしてきた

それを見てメルサ達は呆れていた

俺はそんなウィンディも可愛いと思えてしまうのはおかしいのだろうか…


三角の前に行くとハープが出迎えしてくれた

相変わらずの不愛想な感じではあったが

いつにも増して不愛想な感じだ


「…また来たのね」


「ええ、ハープ、あそこに取り残されたのは今は水に流しますわ

ウィルはどこにいるのかしら?」

「その顔…」

ハープはウィンディの顔を見ると顔をしかめた


「ハープ…?」

「いいわついてきなさい」


前回と同じ長く細い道

今回は静かで他に誰もいないようだ


「先に言っとくわ、ここにはウィンザード様もウィルもいないわ」


「な、またおいらたちを嵌めようっていうのか?」

「嵌めるつもりならわざわざ言わないわよ」


「なによまどろっこしい 何かあるなら早く言いなさい」

ウィンディがいると話が早い

この暴走が少し心配でもあるが


「そうね、簡潔に言うとウィンザード様は消滅し

ウィルは跡を継ぐべく とあるところに行ったわ」


「何言ってるんだ?

ウィルがウィンザードの跡を継ぐわけがないだろう?」


「私も複雑なのよ!」

今まで無愛想だったハープが感情を露わにした


「私だってここ数百年ウィンザード様に仕えてきたのに

いきなり…いきなりこんなことになるなんて…」

ハープは膝を崩し泣き出してしまった


ハープをメルサが宥め落ち着くのを待ち

また細い道を行った


その間中ウィンディはずっと足をカツカツ鳴らしてイライラしていた



奥の部屋

以前ウィンザードが居ただだっ広い広間に

一人小さな子が蹲っていた


悪魔…妖精の血が強い感じ


おそらく藍と呼ばれている子だろう


「う、ウィンザード様…」

「藍、オーグン達が来たから連れてきたわ

ウィンザード様とウィルの言葉に従うなら彼らに決定権があるわ」


藍はちらっと俺らを見た


髪の長い可愛い女の子だった

ぱっちりと開いた目に

額には小さい龍族特有の角

妖精族のしっぽをなびかせていた


種族で言ったらどこにも属せない嫌われ者になるのだろうが

俺は彼女をとても可愛いと思う


藍は再び俯くとこもった声で

「勝手に決めて…」

と言った




俺らはハープから説明を受けた


ウィルは数千年前沈まなかった人間の国に行ったのだそう

場所は俺らが置き去りにされた海を行ったところなのだそう


そしてさらに衝撃だったのは

この世界は丸いのだという事

海をそのままずっとまっすぐ行けばウィルが生まれた人間の国に着くのだそうだ


ウィルはそこに人間の歴史のすべてを知りに行った


待っていてもいつ帰ってくるか分からない


向こうにどんな人がいるのかも分からない


ウィルが行ったのは数日前

すぐ合流できると信じて

俺らも行くことにした











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