第34話「つなぐ」


ウィル視点------------




オーグン達と別れ国に戻っているのだけれど

僕は結局何がやりたいのだろう


国に帰って悪魔をまた追い返した所で僕はその後どうするのだろうか


今は好き勝手やっているが、もう少し大人になったらお父様の後を継いで国王になるだろう


でも、そうしたら僕という人間はいなくなってしまう


国の事など無視してオーグンたちと過ごしていた方が幸せに決まっている


だが、僕は結局敷かれた道の上からは抜け出せない


国が潰れたら僕は自由になれると思ってはいてもこうして僕は帰っているのが証拠だ



オーグン達と楽しかった日々を糧に国王として生きる事になるのだろう


まあ、僕にはムーが居てくれればそれでいいんだけどね


ムーを見ると自由に僕の周囲を飛びながら

虫と交流したり、小鳥と交流したりしてる


君が楽しそうならそれで良い



背後から視線を感じる…


……つけられている…

正確には見られている


これはメルサの所にあったオーガが使っていた魔道具の感覚か…

だがあれはテンが持っていたはず

そんなに何個もあるものなのか?


目の前に突然3角錐の大きな建物が現れ

中から悪魔らしき女が出てきた

「ウィル様 お待ちしておりました」


「僕を見ていた 趣味の悪い能力を使ったのは君かい?」


「はい、あなたを探しておりました」


僕は少し機嫌が悪い

「君は誰?僕に何の用?

急いでいるんだけど」


少し凄んだだけで悪魔は額から汗を流している

これくらいで気圧されるのか


「う、ウィンザード様が中でお待ちです」


「ウィンザード?オーグンと会ってるんじゃないの??」

ウィンザードがここにいるということはオーグンはすっぽかされたのか?

このような輩にオーグンがおくれを取るはずはない

でもそれなら僕がやればいいだけの事


「ひぃ…」

女の悪魔はそこで腰が抜けてしまった

こいつと話していても埒が明かない


「いいよ、中に入れば良いの?」


「は、はい 道なりに行った所にウィンザード様はいらっしゃいます」


「そ」

僕は座り込んだ女の横を通って彼女の言う通り道なりに進んだ


入り組んだ通路の奥の部屋には一人の女性と一人の悪魔がいた


この感じ…

また魔道具…

上を見ると怪しい鉱石があった


ここまで色々な魔道具があると面倒だ


僕は間髪入れずそこに魔法を撃ち込んだ


「!!」

直ぐに反応して悪魔の方が僕の魔法を相殺した


が鉱石にはヒビが入った

「う、ウィンザード様ぁ…」

「良いのよ藍…もうそろそろ鉱石自体寿命だとは思っていたわ

私亡き後にはウィルに仕えなさい」


「君たちは何訳の分からないこと言っているんだい?

君達を殺せば戦争は止まり僕もオーグン達の元へ帰れる」

僕は手をかざしありったけの魔力を込める


こんな面倒くさいことになって

こいつらにも自分にも嫌気がさす


とっとと終わらせてまたみんなで楽しく過ごそう…


目の前にムーが立ち塞がった

「?ムー?何でだい?

君はオーグンの所へ帰りたくないのかい?

君はそっちの味方なのかい?」


ムーはウィンザードの所へ飛んでいった

「ごめんなさい ムー 私にはもうあなたを抱き締める身体が無いのよ…」

ムーは悲しそうな雰囲気を醸し出している


「ムー 君は僕を騙していたのかい?」

僕にはムーがすべてだった

生まれてから僕自身もずっと特別扱いされていた


ムーも同じ境遇だったはず

だからこそ僕はムーの事を信頼していたし…


ムーは大きく首を横に振った


「じゃあ何でそいつの肩を持つんだい?」

僕はムーに裏切られたのだったら…


殺気が膨れ上がる


ムーは僕を騙していたのか…

ムーが悪魔なのは分かっていた

僕にはそんなことどうでも良かった


でもムーはずっとウィンザードの使徒として僕についていたのか…


そう考えると怒りなのか悲しなのか

全身が引き締まりつぶれるような感情が内から湧き上がってくる


これが本当の感情ってやつなのか

頭の中がやけにひんやりしている


怒りが爆発するって表現があるけど

僕にとってそれは少し違うな


僕は冷静だ

でもこの感情はぶちまけないと自分が辛すぎる


もうどうでも良くなる

ここのすべてを吹き飛ばそう

そんなことしたら僕自身もどうなるかもわからない

もうどうでもいい…


僕は全身の魔力を一点に集めた

この感情が集まるように

感情の流れに従うまま爆発させよう


「お願いよウィル、私達の話を聞いて…」

ウィンザードの悲痛な叫び

ムーも僕の手を握り首を縦に振った



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