第31話「同行の理由」


数日後テンがようやく目を覚ました

「あれ… ここは…? 君は…?

オーグン何でそんなに端っこにいるの?」


「いや、いろいろあってな 目が覚めて良かった」

俺は先日の失言から彼女たちにある一定の距離に近づくと蔑んだ目をしてくる

だから離れなければならない

メルサも仲間内で好き嫌いがあると空気感が悪くなるって言っていたのに

結局この仕打ちか…

まあ、今回は完全に俺が悪いんだが


逆にウィンディとメルサはたった数日で本当の姉妹のように仲良くなった

おそらく俺という共通の敵がいるからだろうが…

平和に貢献出来ているなら良いか…


「テンちゃん腕は痛む?」

テンは自分の無くなった腕をじっと見つめ

唾を飲み込むと


「大丈夫さ 死にはしないから

それにおいらの術に腕は関係ないしね」

と明るく振舞っていた


「ところでそのウィルに似た女の子は?」

「彼女はウィンディ ウィルの妹だって」

「は、初めましてウィンディです」

「ははーん

さてはオーグンが何かやらかしたんだな」

鋭い…


「まあ、そんなことは誰が見ても分かるよね

よっと っと?」

テンが寝床から立ち上がると

一瞬ふらつく

メルサがそれを支え

「悪いねメルサ 大丈夫だから」

とメルサの支えを解く


「じゃあウィルを探しに行こう」

「お前もう少し休んだ方が…」

「おいら何日も寝ていたんだろう?

大丈夫さ!

それにウィルもどこかで助けを求めているかもしれないから」


「あの…やっぱり私も連れて行ってはくれませんか…?

メルサさん…昨日の事なのですが 私旅をしなくても他に知り合いもいませんから

置いて行かれたらどのみちここで一人、死ぬんだと思います」


「……」

メルサは考えこみ

「…ダメよ

ウィンディちゃんここなら前王国の残党が居たら探しに来てくれるだろうから」

「やっぱり私がオーグン…さん…仲良く出来なさそうからですか?

…分かりました!」

とここでウィンディが俺の腰辺りに抱き着いてくる


うほっ なんだこのご褒美…

女の子の身体ってこんなに柔らかいのか…?


メルサがイルスに吹き飛ばされたのをキャッチした以来だ

メルサはなんだかんだ修羅場を潜り抜けていて女らしさの中にも弾力…強さがあった

人間だからなのかウィンディの肌感は吸い付くようだ


それにこんなところで香りなんて付けていないはずなのに

めちゃくちゃ甘くフローラルな良い香りがする


ああ、ダメだ…

理性を保つんだ俺…


「これでどうですか!

何なら私、オーグン…さん…の事受け入れられますよ!」

「うっ…」

メルサは顔を引きつらせている

テンは何が起こっているのか分からない様子だ


ここは俺が男らしくビシっと決断しよう

「ウィンディを連れて行くぞ!」


メルサは表情を曇らせる

「いいんじゃないか? ここに置いて行っちゃうのはあまりにもかわいそうだよ

ウィルに会わせた方がいいしね」


「テンさん!ありがとうございます!

テンさんもモフモフで好きです!

後でぎゅーってさせて下さい!」


「分かったわ…

オーグン分かっているわね

ウィンディちゃんに変なことをしたらただじゃおかないわよ」

そう言うメルサは今までで初めて見せる表情を見せた


最近のメルサの戦闘能力だと

冗談抜きで殺られる気がする…


「お、おう!」


「ありがとうございます!メルサさん!」

メルサからの許可が下りた瞬間ウィンディは俺を突き飛ばし

テンに抱きついた

「テンさんもありがとうございます

このモフモフ…気持ちいいです!」


テンもまんざらではない顔をしている

羨ましい…

羨ましいぞテン

そんなにギューギューされたら…俺なら…

「私、もしオーグンに襲われたらすぐ二人に言います

その時はしかるべき対応をお願いしますね」


ウィンディは二人に可愛く会釈した


三人からの冷たい視線を感じる

そこまでされたら興奮は一気に冷めた


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