第30話「妹」


俺はテンがいる寝床に彼女を運んできた



山小屋に着き寝かせ

全身びちゃびちゃの彼女をどうしようかと思った瞬間彼女は目を覚ました


「な、な、何で私の小屋にいるのよ!!

はっ…!」

彼女は自分の状態を見てから辺りを見回す


俺も彼女が何を見てるのか

もしかして隠した武器を探してるのかと思って目線についていこうとする

一瞬干してある下着のようなものが見えた

来た時は気が動転しすぎて全く気付かなかったが

この小屋は住んでいる形跡がそこらじゅうにあった

「み、見ないでぇ!!!」

彼女が声をあげると

メルサが俺の視界を手で隠した


「え、?」

妹の意外そうな声が聞こえた


まさかメルサが味方してくれるとは思わなかったのだろう

俺はそんな事よりこの部屋にある妹の形跡を見たかった

なんとかメルサの手の隙間から覗こうとした


がメルサの魔法で完全に視界が塞がれた


くそっメルサ、ここで魔法使うのかよ…

てか、俺にここまで効く魔法…

強くなりすぎじゃねぇか?


「一人で着替えれるわね?」


「え、?

あ、はい…」


「私達は外で待っているから

着替えと片付け終わったら呼んでくれないかしら?

それと、その子は気を失って寝てるからそっとしておいてくれないかしら?」

妹はテンを見ると

ビックリするも

メルサの方を見て

「お心遣いありがとうございます…」

といった


それをメルサが聞くと

ニコッと微笑んだ


ように思えた


俺は見えん…



数十分後妹は鎧を脱いだ普段着で私達を出迎えた


街中で歩いていた女性と同じような特徴も無い

無地の上下の服装

こうしてみるとウィルの妹は普通の…

いや、めちゃめちゃかわいい普通の少女だった



妹は俺たちを中に向かい入れ

正座で座ると頭を下げ…

「メルサさん

先程は失礼な言動…」

と言いかけたところでメルサは

「良いのよ

慣れてるから」

「ですが…」

「良いの

こうゆう世界って割りきってるから」

妹は複雑そうな顔をした


「お兄様はちゃんと世界を見ていたのですね」

「そうね… ウィルは大人び過ぎてるわね」

「メルサさんはお兄様と結ばれなかったのですか?」

「彼には何度も殺されかけたのよ 結ばれはしないわよ ははは」

「そんな…メルサさんを殺そうとするなんて お兄様も女性を見る目が無いのですね」

「違うわ 私が悪党なだけよ」


ガールズトークについていけない


「オーグン…さんも…ごめんなさい」

妹はこちらを向き 頭を下げずに謝ってきた


「いや、俺は、その

あの時は俺もおかしかった

すまんな

初対面でいきなり変なこと言ってしまって」

今でも赤面するほど恥ずかしい

あれは黒歴史だ

己の欲でしか行動出来ていなかった


それを聞くと妹は嬉しそうに

「そうですよね!

あなたが悪かったですよね

私は悪くない

うん オーグンが悪い!!

何で私謝ったんだろう?」


あれ…?

なんか メルサとの差がありすぎないか…



「申し遅れました 私はオルミナ王国王女ウィンディ」


チンピラ兵士が言うには

ウィンディは恨み 復讐するつもりだと言っていた


だが、隠すことは彼女に悪い

俺らはウィンディに事のすべて包み隠さず話した

キンジュから聞いた話も外の話も全て


それでウィンディが復讐鬼になろうとも

彼女が選んだ道を否定など出来ない


メルサの話に頷きながら

俺がメルサの話に補足すると「お前は話すな」と言わんばかりのウザそうな顔をしながら

全ての話を聞いた


彼女は話を聞くと

遠い目をしながら

「正直…ここ数日どうやって復讐しようか、そうゆう事ばかり考えていました」


「ですが、メルサさんに会って

敵意と恨みをむき出しにしていた私の事を気遣ってくれた…

悪魔や魔族は悪い人では無かった

父上と母上が居ないのは悲しいですが

二人ともすぐに自害してしまった…

おそらく国の矛盾に分かっていたのだと思います

メルサさんの話を信じます」


「そうか…」

今なら分かる

相互不干渉を守るため

他種族と関りを持たせないため

自分の種族を守るため

そのように教育することは当然なんだろう

オーガの里ですら近しいものがあったのだから


「あの…

私もお兄様を探すのに連れて行ってはくれないでしょうか?」



ウィンディも一緒に来るのか?

いきなりハーレム状態になるのか

俺得状態…?


今までは女一人という事でメルサに気を使っていたし

メルサにも俺が発情しないように気を使わせていた


もしかすると女子が一人増えることでその気遣いが緩むのでは…?


しかもウィンディは俺のドストライク


むふふふ

おっとっと顔を引き締めなくては


メルサは俺の心を見透かしたかのように

「ダメよ」

即答した


「なっ!」

俺とウィンディの声が揃った

「なんでだ?」

「なんでですか?」


「一つは旅が過酷なこと

ウィルですら戦闘ではなく旅で危なかった時もあったわ

ウィンディちゃんの事庇っていられない

それともう一つはウィンディちゃん あなたオーグンの事嫌いですよね?」

「そ、それは…」

「仲間内で邪険に扱ったりすると空気感が悪くなるのよ」

「……」


ああ、メルサは最初ウィルにめちゃめちゃ邪険にされていたな

あの時は気にしていないと思っていたが

空気感が悪くなっていたのを気にしていたんだな

今となっては だと思うけど


「ですが…この男はお兄様を誘惑したんですよ!」


「ウィンディ…さっきから誘惑って言ってるけど

誘惑ってなんだ?」

と俺が聞くと

明らかに蔑んだ視線を俺に当ててきた


「それを女性の私に言わせる気…?」

何だろう…

そこまでウィルに対して変なことはして…

思い返してみると

しては無い…ゴブリンの時 多少されたことはあるが…


ウィンディは顔を俯き

耳を真っ赤にしながら

「…ここと…………あそこ………」

聞くに堪えれない 破廉恥なことを言い出した

「ま、待て!」


ウィンディは顔を上げると真っ赤な顔をしていた

とてもかわいい

じゃなくて

「そんな事してない! 誰から聞いた?」


「お兄様が出ていったときお父様とお母様が言っていた!

『ウィルは俺らと違うからな』

『ええ、未知を知りたがる誘惑には耐えられないでしょう…』

って!言ってたわ!

誘惑ってそうゆう事することでしょう?」


ここでメルサの助け舟が入った

「ウィンディちゃん

オーグンは他種族の女性と仲良くなりたくって旅してるのよ

ウィルとそうゆう事は無いわ

それにウィルの事は未知を知りたがる誘惑って

この世界の事を知りたいって事だと思うわよ」


それを聞くと今まで赤かったウィンディの顔が火を噴きそうなほど紅潮する


ここは俺の番だ

俺が論点を変えればウィンディのは無かったことになるだろう

「ははは そうだ! 

俺がウィルにそんなことする分けねぇだろ!

そうゆうことはむしろウィンディにしたいからな」


ここから俺とウィンディの距離はより遠くなった

いや、メルサとの距離も遠くなった



うん

完全な心の声が出てしまった 失言だ


しばらく全員から距離を置かれることとなるのは言うまでもない


俺の旅の目的が果たされる日が遠のいていった



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