第29話「初失恋相手」
狭い通路を歩いていくと古い一件の山小屋のようなところに出た
寝床のようなところにテンを寝かせる
テンも少し顔色が戻ってきた
腕は治らないが体力が戻れば命に別状はないだろう
俺とメルサは外に出た
ここは森中に隠れるようにポツンと立つ
低い平屋の山小屋
周辺の高くなっている所に乗って森間の遠くにさっきまでいた王宮が見える
とりあえずここは安全だろうか
「あっ!!?」
真後ろから声がした
振り向くとそこには兵士がいた
「くそっ ここまで追ってきたのか…
テンは‥」
「ごめんなさいオーグン、私も体力の限界で周囲の警戒を怠っていたわ…」
流石にメルサもさっきの術は厳しかったのだろう
こうなったのも仕方がない…
俺がやるしかない
でも…勝てるのか…?
あんな負けかたして
皆を守れるのか
自分の命も仲間の命も全て奪われるのでは
俺のせいで…
大事な仲間が……
足が震える
「悪魔とあのオーガが… 殺してやる」
兵士は剣を抜いた
足が震え俺はその場に立てなくなり
膝まずくしき頭を下げるしか出来なかった
「み、見逃してください…!」
惨めだ…
情けない…
誰がこんな姿になるオーガ族族長を想像しただろうか…
でもそれで皆が助かる可能性が少しでもあるのなら
俺は何でもする!
仲間を失いたくはない!
「はぁ?
あんた何言ってるの
自分が何したか分かっているの?
私たちをめちゃくちゃにして」
そうだ…俺のワガママのつけが回ってきたんだ
「自分が強いのかなんだか知らないけど好き勝手暴れまわり」
そうだ、俺は強いと思ってた
今なら分かる
世の中を知った振りしてたけど
根本は強さで何でも出きると思ってたんだ
強さが奪われたら俺は結局何も出来ない
「お兄様を誘惑した
あんたは許せない」
??
お兄様? 誘惑?
兄って男の事だよな…?
俺は男を誘惑した覚えは一切ない
俺はゆっくり顔を上げていく
足を良く見ると兵士の鎧は俺を殺そうとした奴の鎧より
数段きらびやかだった
そして細身で美しい足をしている
そして顔を上げると
鍛え上げられた感じの身体ではない
男の身体ですらない
顔を見ると美しい女性…?
いやぱっちりした目、水をすべて弾きそうなモチモチの肌
可愛い
ウィンザードの面影?
彼女を少し幼くしたような顔
見たことのある顔だ
いや、覚えている
忘れる訳もない
俺が初めて求婚した女性なのだから
イルスのバカの入れ知恵のせいで逃げられてしまったが
「き、君は…?」
「ちっ‥
また会うとは思わなかったわ‥
今回は逃げないわ…」
「こんな弱気のオーガならチャンスよ」
最後のはボソッと小声で聞こえた
彼女は俺の頭を踏み
もう一度頭を下げさせる
「オーガよオルミナ王国王子が命ずる…
…ウィルお兄様を我が国に返しなさい!」
!!????
ウィル…お兄様……?
そういえば前に妹がいるとかいないとか言ってたよな…
か、彼女が妹!?!?
下手したらウィルが俺のお兄様になっていたのか…?
あ、危ないウィルのお兄様の想像などしたくない…
何て仕打ちをさせられる事だろか…
まさか彼女がウィルの妹だったのか
今考えてみれば高貴な鎧を着ていたのに一人で境界線あたりを歩いていたのは不自然だ
あの時は放浪中のウィルを探しに来ていたのか
でも、何故彼女がここに?
チンピラ兵士の話だと行方不明のはずだが
「あなた…人の下げた頭を上から踏むなんて
育ちが悪いようね」
メルサがゆっくりと妹に近づく
「あ、悪魔!!
動くな汚らわしい悪魔よ
このオーガの命が惜しくないのか?」
妹は踏みつけた俺の首に剣を突きつける
「ええ、惜しいわ
私を救ってくれた大事な人ですもの」
メルサは歩みを止めず進む
メルサ…俺の事そんな風に思ったくれてたのか
心が弱っているからなのか
涙が出そうなのをなんとかこらえる
「動くなと言っているだろう!」
妹は剣を俺の首に振り下ろす
ガン!
妹の剣は俺の首に弾かれた
「あっ… あっ」
なお近づいてくるメルサに妹は恐れ
しりもちをつき後退りをする
それでもなおメルサは近づく
妹は木にぶつかり
後退りが空回りしてる
本人は恐怖で木にぶつかった事にすら気付かず
離れようとしているのに近付いてくるメルサに
冷や汗どころか
涙
鼻水
身体中から危険信号を知らせる体液が溢れ出ている
そしてモチモチの肌がそれらの水分をすべて弾く
「め、メルサ!殺すな!」
俺の声は届いていないのだろうか
メルサは反応しなかった
顔中ぐちゃぐちゃの妹の目の前にしゃがみ
顔を覗き込むように
「しっかり教育しなきゃね」
そう言うと
妹は失禁しながら失神してしまった
こ、この光景はどうしても反応してしまう
俺には刺激が強すぎたようだ
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