第28話「夜襲」
俺らは部屋に案内された
部屋というより通路
沢山の扉がある
「ここらは誰も使ってねぇから好きに使いな」
それだけ言うとチンピラ兵士は帰って行ってしまった
彼は勤務時間が過ぎたら城下に住んでいるらしい
ちゃんとやっているんだな
俺らはたくさんの扉の中の一つに入った
適当に入ったとは思えないほど整えられていた
別々の部屋でも良かったのだが
俺らはなんとなく一つの部屋にまとまった
警戒というよりは広すぎて落ち着かなかった
ウィルが寝るときに使っていた台座のようなところに二人は寝てみたが柔らかすぎ
これもまた落ち着かないらしく
結局全員床で寝る
俺には小さすぎた
「今日はほとんど動いてないからまだ元気すぎて寝れないね…
メルサは妖精王が言った通り魔法を使いきって寝ないの?」
テンがそう言うと
「なんだかここ嫌な感じがするのよ…」
「やっぱり!?
おいらも最初はトラウマが消えていないだけだと思っていたけどどうも違う気がして…」
「人間嫌いは直ったのか?」
「うん…
あのチンピラ兵士に再開した時もそうゆう感情にならなかったから」
「そうか、良かった」
「オーグンは『良かったな』じゃなくて『良かった』なんだね はは
オーグンらしいね」
「??」
しばらく何気ない会話をしていたら
コツン
コツン コツン
「メルサ、遠くから足音が近づいていない?」
コツン コツン コツン
メルサは神経を集中させる
「ええ 背格好は人間程 兵士の鎧を来ていて誰かは分かりませんわね」
「見回りか?」
「だと 良いですけどね…」
コツン コツン コツッ…
「部屋の前で止まりましたわね」
「おおおおお化けじゃ無いだろうな」
「なんだテン、お化けが怖いのか?」
「こここ怖くなんかないやい!」
「そうね、お化けと言ったらウィンザードですものね」
「やっぱりあいつはそうゆう感じなんだな」
「じじゃあ怖くないぞぉ」
………
沈黙が場を制す
「メルサまだいるのか?」
「ええ」
「なな何してるの?」
「扉を眺めて動きませんわ…
ッッ!? 来ます!!」
その瞬間扉が粉々に蹴破られ
刀の持った兵士?が飛びかかってきた
俺は一歩前へ出て敵の攻撃を受ける準備を
テンとメルサは回り込み敵に一手目を出させた後どちらかの技で身動きを止める準備をした
悪魔王の時もイルスの時も母の時もこの戦い方が一番効いた
敵は思い通り俺に刀の柄に手を掛けながら突進して来る
⁉
だが敵は身体を反転
全て見透かしたかのように…
いや、初めから一人を狙っていたかのように
居合いで切り上げた
舞う血飛沫と腕…
テンの片腕が切り落とされた
「テン!!!?」
敵はテンに止めを刺そうと斬りかかる
「くそっ!」
俺は敵を蹴っ飛ばした
「メルサ!テンと逃げろ!!」
敵は俺の事を意にかえさず
立ち上がるとすぐさまテンに斬りかかった
俺からすると隙だらけ
もう一度蹴っ飛ばしその隙にテンとメルサが部屋から出た
ようやく諦めたのか
敵はゆっくり立ち上がり俺の方を向いた
二回も蹴っ飛ばしたのに全く効いてない…
誰だ!?
敵は俺に斬りかかってきた
俺はいつものように急所を隠し防ぐ
シュッと剣を振りぬいたとは思えないほどの音が鳴る
切られた皮膚から血が流れる
今までで一番深い傷が身体に刻まれた
白虎が一番早いと思っていたが力も速さも明らかに格上
こいつが悪魔を追い返したんだろう
敵は弄ぶかのように俺を逆に蹴飛ばした
鈍い痛みが腕を伝わり
全身に伝わり
俺は部屋の外に放り出された
いてぇ
こいつ…
俺より強い…
「オーグン!」
逃げたはずのテンとメルサが通路に立ち止まっていた
敵が部屋の外でそれを見ると構わずテンとメルサの方に向かっていった
「ま、待て」
身体が追い付かない
テンは立ち向かっていた
この距離ならやられる前にテンの技が掛かる!
俺もそう思っていた
しかし敵は止まらない
「ななんで なんでおいらの術が掛からないんだ…!!?」
敵がテンの目の前に迫った時
敵は石のように固まった
「…かかりましたわ」
片腕を無くしたテンはその場にペタンと座り込んだ
腕からは絶え間なく血が出ている
「オーグン…この下に隠し通路がありますわ
私の術も龍の力を取り入れたとはいえ長くは続きませんわ
早く行きましょう」
「ああ‥」
廊下の陶器の床を剥がし
俺がかがんでギリギリ通れるくらいの通路を行った
一応メルサの技が解けた後通路内で迎撃の準備をしていた
けれどテンの血の跡を拭き取っておいたお陰か
この通路に気付かず帰っていった
テンの止血をした後
狭い狭い通路を三人無言で進んで行った
ショックだった…
今までイルスやウィル等、自分と同格の強さを持った奴と戦ってきたが
さっきの敵は俺よりも格上だった
何故かテンに執着してたから生き延びれたが俺を殺す気だったら殺られてた
メルサもそんな相手を数十秒止めるなんて
かなり強くなっている
アイデンティティーを奪われた気がする
「オーグン、テンの手助けして下さい」
そこであっと気付く
テンが青白い顔で息を切らしながら歩いてた
テンがこんな状態なのも気付かないくらい
自分のことしか考えれていなかったのか…
自分で自分が嫌になる
俺はテンを抱き上げ
狭い狭い通路を屈みながら歩いていった
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