第19話 「謁見 約束」


悪魔王からメルサに出された指令の海岸にたどり着いた


魔族の側のずっと奥


オーガの里はほぼ最奥だと思っていたのはある意味正解だった

ここに着くまで他に魔族の集落はなかった


あったのはクーの屋敷だけ



「指定されたのは四角錐の建造物…」


遠くの海岸線にそれらしきものが見える


俺らはその四角錐の建物に近づいていくと

思っていたよりも距離があった


近づいたら大きかった


「でかッ」

一同が思わず声に出てしまうほどに


石造りの誰が何のためにこんなものをこんなところに建てたのだろうかと言わんばかりの

不自然な古い建造物

ウィルが居たら絶対に興味を持つであろう


「本当にここで合っているのかしら」

メルサは不安そうにしている


「何故だ? 王とかいそうな建物じゃねぇか」

俺はウィルと違って歴史には興味なかったが単純にこの建物には男心をくすぐられる


「だからこそよ こんな魔族側の奥でこんな建造物を構えているなんて普通ではないわ」


「め、メルサはビビりだなぁ ウィルとの約束もあるんだ

ほら、さっさと行くよ」

そういうテンの声も震えている


前を見ずに歩き出したテンに誰かがぶつかった

「あいた」

テンがその場で転げる


「あらメルサ久しぶりね」

奥から現れたのは最近隠しているメルサよりも悩殺ボディの羽の生えた人のような悪魔

しかし、メルサのような遊んでいる感じよりは

白いピシッとしたローブを身にまとう

清楚で大人しそうな雰囲気…そそる


いかん…反応してしまう


メルサはそんあな俺の顔を見て一瞬 不機嫌そうな顔をするも

女の方に向き返り

「ハープ 久しぶりね 

知らなかった あなたは直接仕えていたのね」


「ええ 幹部の中では私だけ あなたを含め他の幹部もここを知らないわ

あとここにいるのは四方を守る眷属だけ

ほら、中に入りなさい」


俺たちは導かれるまま中に入ると

中は外とは異質な気配が漂っている

メルサが一番敏感に反応していた


「結界よ 警戒しなくても 聞いての通りあなた達は迎賓

この結界は放浪者を弾くためのもの害はないわ」

そういいつつ薄暗く細い道をまるで明るいかのようにつかつかと歩いていく

メルサと同じで感覚器官が敏感なのだろう


「…あなた 極度の男嫌いでしたよね

オーグンが居てもいいの?」

メルサが口を開くと


「正直、虫唾が走りますわ

でも、これも任務

私はなすべきことをやるまで…」

俺が仁義なき言葉に落ち込みかけた時

ハープの声が広がり

薄暗いながらも大きい通路に出たのだと分かった


「うほぉおう本当に外の者だぁああ」

上空から子供のような声がして上を向くと

天井が高い通路にはいくつものつながる道があり

迷路のような上の階があった

俺たちは三方から覗かれていた


「なんだ?」


「おう! オーガよ わちしは朱の鳳凰なぁりぃ」

差一緒に声を上げた小娘が燃えている羽をバタバタさせながら言った


「おう てめぇがあのオーグンか‼

用事が済んだら手合わせ願う

俺は白の虎だぁ よろしくな」

図太い声に隆々の筋肉 白い虎の獣人が雄々しく叫んだ

少し親近感が沸く


「儂は黒の亀 玄武 もう一人はここにいないが我らが悪魔王の眷属じゃ」

甲羅から出る手足で杖を突きながら

よろよろと歩く黒ひげの爺さんも続く


彼らが眷属

普通の者でない雰囲気を醸し出している

正確な実力は分からないが確実に強い…


「あなた達仕事はどうしたのよ」

ハープが彼らを咎める

ここも力だけが関係を決めているわけではなさそうだ


「なぁーにわしらはまとめて奴の交換要員じゃ

奴が仕事してくれている時はわし等は手持無沙汰じゃ」


「だったら私と変わりなさいよ

何でまたこんな気色悪い男と同じ空気吸わなきゃいけないのよ」

ちょっと俺今回はまだ何もしていないのだが

可愛い子にここまで言われると

メンタルがブレークしちゃうぞ…


「それこそお主の仕事じゃろう」

ハープはぐぬぬと言葉を飲み込むと

黙ってツカツカっと早足で歩き出した



狭い迷路をたどり、連れていかれた広間は

中央に飾られた台座のような物が置かれるのみの空間

どう先回りしたのか分からないが早足の俺らより眷属の三人は先につき

中央に膝まづいていた


ここであの悪魔王に会える

アキナの里をめちゃくちゃにした…

アキナの顔を思い出すにつれ

私情も混じった怒りがわいてくる


ブンと台座の前に何者かが現れた


俺はその瞬間走り拳を振りかぶって殴ろうとした


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