第12話 「駆け引き」


そこから先は地獄だった

前に毒を飲み死にかけた時の事が可愛く見える…

いや、あっちのメルサの膝枕は天国だった…


未婚のオーガの女が

婚齢期の女すべてが…

いや、明らかにババアも混じっている…


玉の輿を狙いあらゆる攻撃を掛けてくる


俺は何とか人一人入り込める岩山の切れ目に入り込み入り口を手で塞ぐ


塞いだ手に女が胸を押し付けながら喚く

「私がオーグン様と結ばれるのよ」

「オーグン様私をめちゃくちゃにしてください」

「オーグン様ぁああ 私100番目でもいいから子種を下さいぃい」

こんな状況に性的興奮もクソもねぇ


するするっとテンがネズミに化け

女どもの隙間を縫ってやって来た


「オーグンが他種族女性に拘るのが分かったよ

内心ただの他種族好き変態野郎だと思ってた

ごめん…」

テンは泣きながら謝ってきた


お前は俺をそんな風に思っていたのか…?


テンは一通りおいおい泣いたら帰って行ってしまった


薄情な‼


夜になった

さすがに前も見えない位辺りも暗くなると人は減っていった


メルサがやって来た

彼女の感覚なら暗闇も関係なく動ける

「私たちは離れの小屋をあてがって貰えました

私がそこまで先導します」


メルサの先導…

どうしても胸に肘が当たる

わざそか?…いや違う


以前まではわざとだったが

ウィルや母との契りがある

それを破るはずがあるまい


当たる感触は服の上から

普通にしてても暗く前が見えなく転ばないように身体を寄せることで

周りに感ずかれず早く移動でき

足元の凹凸に引っかからないようにしてくれている


そう こうゆう状況がそそる


ってそうじゃない


「私たちが借りている外れにも先ほどまでオーガの女の子が集っていましたわ

女性のオーガ然り大奥様は本当におっかない方ですね」


メルサと母との出会いはメルサに恐怖を植え付けたようだ



朝騒がしくて起きた

ウィルが離れの周囲に作った壁をどんどん叩かれている


「ちょっとオーグン何とかしてよ

うるさいんだけど」

ウィルはご機嫌ななめだ


「仕方ねぇだろう

こんなことになるなんて思ってもいなかったんだから」


「はぁー

アキナに触発されて来てみればこれか…


情けなくフラれたんだから

諦めてここで余生を過ごせば?


こんなに君のことが好きな女の人がいるならハーレムでも築けるでしょう?

僕がアキナと君の分 悪魔王とやらを痛めつけとくから」


「あ?」

流石に今の発言は頭にきた

図星だが言い方が気にくわない


「ちょっと!

喧嘩してる場合じゃないだろ」


「そうですわ

あなたたちこのままでは私たちもこの場から動けなくなりますわよ」


「ちっ…」


しばらく壁の音をドンドン叩く音のみがこの場を支配した


この状況がずっと続くのだろうか

俺の貞操が奪われるまで…


いやだ!

もう怖いとか言ってられない

「母さんと話しをつけてくる」


「この中どう行くの?」


「それに話をしたところでどうにかなりそうな感じではなさそうでしたけど」


「うっ…」

俺は…いや俺らはもう外には出られないのか


「ち、力ずくでもこのバカげた狩りを辞めさせる」


はぁ…とメルサがため息をつくと

テンの方に歩いて行った

「テンちゃんウィルちゃんあの魔道具使ってもいいかしら?

オーグンちゃんおうちの方角と目印は?

あ、ウィルちゃんこの魔法陣って即死とかは無いわよね?」


「感覚器官を鋭くするのは魔法に数えられないと思うよ

それに即死は無いよ」

ウィル…案外簡単に教えたな…?


「そう」

メルサはテンから魔道具を受け取ると精神を魔道具に集中する


「俺の家はここらで一番大きい家って言えばわかるか」


メルサは魔道具を覗き込みながら目をきょろきょろと動かす

「ええ、ありましたわ

北北東に256mの所のね

あとはウィルちゃんの魔法で地下に穴をあけて貰えれば誰にもバレずにいけるわよ」

あらま結構簡単に解決しちゃった…

魔法と魔道具ってすげぇんだな


感心している場合じゃない

あの母と一戦交えるかもしれないんだ

気を引き締めねぇと




掘ってもらった穴を進み決死の覚悟で地表に出ると

懐かしき俺が育った家のリビングであった


そこには母の肩ににゃんにゃんしている父がいた


おい父よ

威厳とはなんぞや


父は一瞬はっとすると

諦めたのか表情を引き締め語りだした

「我が息子よ

俺も小さい時は俺の親父…お前の祖父が世界中を旅し

様々な女と関係を持ち

帰ってきてからは様々なオーガを妻としたと聞き羨ましく思っていたが

自分より強い一人の女に蹂躙されるのも悪くは無いぞ!」




と、いきなりドンっと部屋の扉が空いた

「襲来、襲来です」


父は母の方にもたれながらクワっと鋭い視線を入ってきた村人に向けた

「バカ者!

家族水入らずに水を指すやつがあるかぁ!」


村人はす、すみませんと言う


母が父を殴った

「バカはあなたでしょ」


「へ、へぇ」

見ると親父の下半身に傘を指している


俺は死んでもあれにはなりたくない


母は相変わらず冷静な表情を崩さない


「百年単位の節目…イルスが来たのね?」


「い、イルスってなんだっけ」

ドゴッっとまた母が父を殴る

「バカは黙っていなさい

そうねぇ…

うちの村の者にイルスは厳しいものね…


あなたたちイルスの脅威をはね除けたのなら」


「イルス…あいつが…」


「あら、知り合い?

ちょうど良いのか悪いのか…

話の通じないもの同士って

なんで逆に通じるのかしらね…?」


俺のはあなたの血筋…

とは口がサケテモ言えない


とにかく話はまとまった



外に出ると今までの晴天が嘘だったかのような暴風だった


イルス…あいつには因縁がある


今日こそ積年の恨みを晴らす時




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