第2話  「俺らの日常」

のどかな草原地帯


ここらは人間と魔族の境界線


とはいえ相互不干渉


争いは起こらず平和なもんだ



目の前には高貴な装備を身にまとった人間の女の子が立っている


この子…


とにかく可愛い‼


別につけ回した訳じゃない…


たまたま偶然こうして出会ってしまった


運命だ…


「な、なんでこんなところにオーガがいるのよ」


焦っている……


可愛い‼‼


まだ駆け出しの冒険者だろうか?


ああ、大丈夫だよ…俺は君を襲う気はないから…


しかし、性欲と食欲は同じというが


高まるとよだれが出てくる


可愛い子を食べちゃいたいってこうゆう感覚をいうのだろうか…?



いや、決して食べることはない


それだけは断言しておく


俺の下半身が熱くなるにつれ


冒険者の女の子の顔色がみるみるこわばっていく


悪いな…そうゆうつもりはないんだ生理反応なんだ許してくれ…


俺も時々こうして冒険者と出会うことはあるのだが大多数が男


その男ですら半数は俺を見た瞬間全速力で走り去り


残りの半数はその場で失神する


だが、しかし、この子はまだここにいてくれる


俺は決心した


「俺と…」


剣を構える女勇者



「俺と結婚してください‼」 愛の告白をするのだと‼


親指をのけぞらせ


指の爪が手のひらに刺さり血を流しながら言う


これが男として女の子に愛の告白をする時の挨拶なのだ


俺は精一杯の愛を伝えた…


「キャアアアアア」


一目散に逃げる女勇者


俺はこの世の終わりを悟った


 魔法を使い空中でポーションをどんぶりに注ぐ王子ウィル






俺は力なく切株から切り出した椅子に座っている


ダメだ精一杯の愛を拒絶されたんだ


そう簡単に立ち直れるはずはない


「ダメだよ オーグン いきなりそんなこと言ったら…


せめてお友達から始めないと…」


ヒック ヒック……


確かにそうだ…


俺は功を急ぎ過ぎたのかもしれない…


ウィルの妖精ムーが励ますようにオーグンの肩を叩く


「ほら ポーション飲みなよ 手のひら痛いでしょう」


俺はこの世のすべてに絶望した酔っぱらいのようにどんぶりのポーションを一気飲みした


手が治っていく


手が治っていくにつれ心の傷が浮き彫りにされていく


「なぁ ウィル… 手の傷はポーションで完治するのに 胸の痛みは治らないんだなぁ」




「……そんなに女の子とイチャイチャしたいならオーガの女の子としなよ君は族長だろう?」


バサッ バサッ


どこから来たのか大きな火の鳥が


片付けしているウィルの後ろに羽ばたいてる


「我はこの世の秩序を守るもの」

俺は震えた


「オーガはここにいてはならん 今すぐ立ち去… 」


俺はその場にあった小石を火の鳥に軽く投げた


小石は火の鳥に激突し


火の鳥がその場で気を失う


「悪い 今それどころじゃないんだ」


そうそれどころじゃない…


世界の秩序とかどうでもいい…


そんなことより大事なことがここにはある


「なぁウィル… 」


「あーあ この子もかわいそうに…」


ウィルは魔法で火の鳥の治療をする


俺は声をふり絞った


「オーガの女は死ぬほど怖いんだよ… 」

ウィルは唖然としていた 



オーガの女は怖い


戦闘力の問題じゃない


サキュバスのように生気を吸い取るような能力もない


だが、対峙するだけで測れない何かが吸い取られているような感じがするんだ


「お前がそれを言うか… 」


呆れるウィル


「族長の君がそれを言ったらオーガ族滅びるよ…」





「た、助けて… 」


突然の遠くでかわいらしい声が助けを呼んでいる

俺の敏感な感覚はすぐに反応した

遠くで女の子が魔物に襲われている


気付いたら俺は走り出していた


「ちょっとオーグン待っ…」


女の子に敏感な感覚にウィルの声など聞こえなかった…いや聞こえたが無視だ


もしかしたら一刻を争うかもしれない


「はぁ はぁ」


おれは全速力で走った


走っていくと


魔物に襲われているしっぽがある綺麗な女性がいた


「待っていろかわいい子ちゃん 今助けるぜ」


オーグンの迫力に天狐を襲っていた魔物は散る


一瞬女性は手のひらの隙間から不気味な笑みを見せた気がした…



「ぎゃあああああ」


俺の迫力に気絶してしまった。


「あ、あれ あれぇー?」


「まったく… だから言おうとしたのに ほら、オーグン行くよ」


俺は再び絶望のふちに立たされた


ウィルが俺を魔法で繋ぎ、連れていく


「ウィルま、待ってくれ」


「何? 夜這いとか言ったら笑えないからね」


夜這いか…確かに…いやダメだ、夜這いなんかしたら女の子と仲良くなれない


でもそれじゃない


ビリビリ



俺は女性に自分の服を破った布をかけた


「あれなら寒くないし俺の匂いで他の奴らが襲わないだろう」


我ながらよき計らいだ


匂いでうなされる女性の事までは気にならなかった


ウィルは同情の目を女性に向けている


そして同情の目を軽蔑の眼に変えて


「オーグンお尻丸見えなんだけど… やめて… 」


うーん


俺が女の子と仲良くなれる日はまだまだ遠そうだ…








ーーーウィル視点ーーー




オーグンと生活を初めて数週間が経った

相変わらず彼と一緒にいる時間は楽しい


毎日毎日くだらない事件を起こしては勝手に落ち込んでいる


今日は人間の冒険者の女の子に振られたそうだ


今までは盗賊の男に紛れた女子など、境界線に住むような人たちばかりでしかもオーグンを見かけるとすぐ逃げるような人ばかりであったらしい


しかし今回は一人なのにすぐ逃げなかったらしい


オーガ族のオーグンといえば誰しも怯える存在というのに度胸のある女子だ


だが、高貴な服装で剣を使う…


少し嫌な予感がする…


手に傷を負っていたのでポーションを与えたら


手の傷は治るけど心の傷は治らないとか言い出した


あの見た目で泣きながらそんなこと言いだしたら流石に引いてしまう


いや、人間も魔族も何も変わらないということなんだろうな


とか言って落ち込んでいたはずなのに


いきなり立ち上がって走り出した


女の子の声が聞こえたと言って


僕は走りながら突進してくるオーグンより怖いものはないと思いとめたが耳には入らなかったようだ


オーグンを追いかけるとしっぽの生えた女性が一人倒れていた


この子は魔物だ


しかもおそらく関わらない方がよいような部類の…


僕はすぐここから立ち去るように促したが

オーグンは何を血迷ったか


自分のパンツを破きだした


ありえない


こんな開放的なところでお尻が丸見えだ


変態だとは感じていたがそうゆう趣味もあったのだろうか



そしてパンツから切り出した布を魔物にかけた


僕は複雑な気持ちになった


確かにオーグンは厚意で行っているのだが


この魔物はどうだろうか…


オーグンの強い魔臭にうーうーうなっている


確かにこれがあれば冷えることはないし他の魔物も寄ってこないだろう


うーんまあ今回はオーグンの厚意を大切にしようか


とまあこんな風に僕の日常は毎日刺激にあふれている


王宮にいた時は決して味わうことが出来なかったものだ



ここに居れば僕は僕らしくいられる気がする



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