第25話 灯台下暗し
2012年1月18日
女性議員、
春葉原の広告規制、番組出演、などメディアを主とした
仕事が多くある中、同僚達と会議も終えて今日の予定を
たたんで、移り変わる目まぐるしさから早々に抜けようと
ここで分かれる事にした。
「今日はこれで解散。
明日は予定通り○×で会食します」
「お疲れ様でした、ごきげんよう」
自分の時間ができる。
あまり余計な所でフラついてるとパパラッチの被害に
遭うからできるだけ早く帰宅しなければならない。
まあ、今まで一度も隠し撮りされた事もないが、
規則正しい生活を送るのに越したことはないのだ。
議員用の宿舎に戻る。
今は自宅に帰る余裕がないので、近場で過ごさなければ
ならない毎日を送らされていた。
どれもこれも、ワケの分からない珍妙なモノ達の出現で
時間を潰されて婦女ティータイムの楽しみすら
どうするか内心と議論する羽目になる。
ただ、寂しさだけは否応なしに部屋を充満していて
ただいまと言っても、おかえりという声が返ってくる
家族的団らん事などないのだ。
虚しいけど、慣れてしまった側面もあり、
目線の側面を部屋のテーブルに向けると何かあった。
(あら、これ何かしら?)
バースデイカードを添えた箱がテーブルの上に置いてある。
そういえば、今日は自分の誕生日だった。
鍵をかけて出たはずだけど、気にも留めない。
今までプレゼントなどもらった事もなく、
贈り物という現物の前に喜びの方が増していたのだ。
包装紙すら破らずに解いていくと、小さな塊がある。
「まあっ、宝石じゃないの!?」
1カラットはありそうな灰色の結晶が指輪として
入っていた。
色合いはイマイチだが、オーバルブリリアントカットの
形状をしたスタイルに魅入られる。
何の種類かまでは分からないものの、
たまらずさっそく指にはめてみるとする。
やはり色合いがイマヒトツだけど、
元から柄なんてどうでもよかったからとにかく似合う。
突然のサプライズに誰かが見ているわけでもなく、
つい
普段からインコちゃんという愛称で親しまれているから、
ファンがプレゼントしてくれたのだろう。
鏡を見てポーズをとりながら笑みを浮かべていた時だ。
「えっ!?」
誰かに話しかけられた。
しかし、部屋には誰もおらず、自分しかいない。
しかも、聴こえてきたのは耳からではない気がする。
懐から言葉が湧いてくるような感じがした。
(この声は・・・私の声じゃない!?)
よく聴くと、自分とそっくりな声だ。
普段からメディアに露出しているからすぐ気が付いた。
跳ね返るように、何かを訴えかけてくる。
いや、訴えは自分が訴えろという意味。
あたかも、今までが
誰にも届かず、相手にされていなかったんだと
身の程を
「なんだか・・・よく分からないけど。
主張せずにはいられない・・・ハフーッ、ハフーッ」
無性に声を張り上げたくなった。
声が聴こえなくなった時には、指がキーボードを操作。
ネットで不意にメガホンを注文して、
どこかで己を
(私は・・・主張が足りなかった。
もっと、もっと大きなコエで伝えなければ)
無数に組み込んである脳内のロジックが口に向かって
収まりようのない母声にネタを用いる事に決める。
何か世論関連からモノを言う手段を探してみた。
ニュース覧を見ると自分の得意分野になりやすい記事。
TV局で起きた女性の暴動事件。
記事を観てメガホンを強く握りしめた。
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