第6話  発端

2011年12月24日


 時は一日前に戻る。

自衛隊の指令室で責任者が都庁を監視していた。

45階から屋上まで七色の結晶に覆われ、

どうやって湧き出たのか、悪魔が度々放出してゆく様子が

見られた。

陸将補の武田たけだまことが部下に状況を聞く。


「逆探知しろ!」

「「我々はオリハルコンオーダーズ。

  歪なる世界を静寂に導く者なり。

  並進対称性に整う固の配列こそ、真の平和である」」

「逆探知成功、発信源は都庁内!」


犯行声明。

オリハルコンオーダーズを名乗る者達は本舎から

外界に向けてメッセージを送っていた。

意味は不明。

分かるのは悪魔を放った張本人というくらいで、

組織構成、人数、見当勢力の類まではつかめなかった。

さらに、相手が起こした術、技術の手の内が見えず。

オペレーターが電磁波の類が普通のものと異なると言う。


「逆探知には成功したものの、

 発信機の周波数が規格のものと別です」

「別? どういう事だ?」


3000GHzを超える電磁波も傍受。

機械による電波発信に思えない型を見受けられた。

政府や自衛隊が用いていない仕様で、

外国製の線も合わずに濃くなりそうにない。


「周波数帯域がどこの国とも一致しません。

 ヨーロッパの線も考えられますが、根拠がなく」

「19年前の者達ではないのか・・・

 だとすれば、どこから?」

「正倉院大臣から連絡が」

「回線に出ろ」

「「こちら防衛省、対策を要請。

  23区外周をバリケードで封鎖、

  怪物達を他県に出さないように」」

「了解、すぐに隊を各地へ出動」

「エージェント、到着しました」

「通せ」


入ってきたのはカロリーナ。

聖夜達と解散した後にここに呼ばれて来る。

日本の警察、自衛隊と連携して事件に当たっていた。

はたから見たら“場違いな者”だと誰もが思うだろう。

しかし、彼女も機関から派遣された

れっきとした協力者である。

大人達をかき分け、重要設備の一角にやってきた。


「まだ、内閣は会議やってないでしょ?」

「ああ」

「どうせ、認証権限順位で詰まってんでしょ。

 こないだの警視総監も返事がおっそいし、

 日本組織って脇を固め過ぎて、

 軋んだ亀裂で穴の空いた底抜けばっかよね。

 で、都庁に誰かいるの?」

「中には蒔村都知事と役員数人がいるはず。

 外に脱出した形跡もないから、まだ内部に」

「そう・・・」


蒔村まきむらサロモン、晃京都知事で

都庁内部に取り残されてしまったようだ。

役員も数人中にいて、からがら脱出した者もいたが、

乗っ取られたように声明同様、

静寂だけが辺りをたたずんでいた。

警視庁から連絡がきた。


「「こちら高橋警視総監、状況は?」」

「我々はこれより晃京外周を封鎖。

 一部のみ他県との交通網を再設置する方針を

 立てる計画をもちます」

「「こちらは引き続き、結晶の確保に向かう。

  宝石店、貴金属関係の業種はすぐに

  営業停止させる指揮を執る」」

「というわけで警察と見解は一致したみたい。

 だから、こちらの動向はそれで以上」

「なに?」

「今、結晶の確保って言ってたじゃない!

 あたしんとこ、ACの適性者を探せって。

 で、校内に希望の星を見つけたから、

 あたしは彼の方に着くからね、じゃあヨロシク」


カロリーナは大した説明もせずに指令室を後にする。

警察とほとんど同じなので、詳細を語らずに終えた。

一連の流れはじゃじゃ馬。

まるで女子高生による隙間をみられた大人の事情で

図星を突かれた誠はあきれた。


「まったく、最近の小娘達ってのは・・・」

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