糸を切った操り人形

切る切る、糸を一本二本。

『行きません』『やりません』


切る切る、糸を三本四本。

『知りません』『聞いてません』


切る切る、糸を…。『分かりません』切る。

糸は切れて、体はドンドン軽くなる。


彼は喜んでいた、これ程体が楽なのは何年ぶりだろう。糸がどれ程動いても、彼には最早関係ない。素知らぬ顔して糸を激励する。


彼は興奮していた、今なら何でも出来そうだ。糸がどれ程動いても、彼を止めることは出来ない。素知らぬ顔して糸を嘲笑する。


糸が切られた操り人形、最早彼は何者にも縛られず。


切る切る、糸を最後の一本。ブツリと重い音を立てて切れた。


地面に落ちた操り人形、彼は誰にも操られない。…自身すらも。

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