13-7
激戦を終え――
真剣狩る☆しおん♪一行と奇術師は、特別な許可をもらい。
ロスト・フォレストサーバーにアクセスしていた。
多くの者が苦汁を飲まされたであろうリュタリアでの戦いも。
サーバーが変われば、その様子はがらりと変わる。
辺り一面が、エメラルドグリーンの中に取り込まれていて。
兵士や、村人も、もれなく同じ状況だった。
「なんだこりゃ……」
第一声を発したのは龍好だった。
続いて、栞と刹風。
「綺麗な事は、綺麗なんやけんど……」
「なんか、不気味っていうか、ちょっと怖いかも……」
「なるほど。リトライには、このような秘密もあったのですね……」
そして奇術師も続く。
みらいは、この状況を想定していたので、それほど驚くことはなかった。
「おそらくだけど、リトライの開発に係わっていたメンバーで現在行方不明扱いになっている人達よ」
「そうなのか?」
龍好の疑問にみらいは、平然とこたえる。
「おそらくだけど、あなたの両親もこの中のどこかに居ると思うわよ」
「マジか!?」
「えぇ、この世界で眠っているからリアルでも昏睡状態になっている可能性が高いの」
「それで、親父達は帰ってこれなかったって落ちなのか?」
「まぁ、付いてきなさい」
みらいに付いて行く形で深緑の森へと足を踏み入れる。
そしてしばらく歩くと木々がなぎ倒された場所に出た。
その中心にはエメラルドに閉じ込められた家族が眠っていた。
小さな女の子は、みらいにそっくりで。
両親は、みらいの両親にそっくりだった。
母親が、娘を抱いていて。
それを、父親が母親ごと抱くようにしている。
「栞、回復魔法大丈夫よね?」
「おまかせあれ~。ヒットポイントの回復と毒消しすればええんやろ?」
「えぇ、予定通りによろしく」
「アテライエル。安息の聖域を解いてちょうだい」
「むぴっ!」
ピー助がエメラルドのかたまりに、鼻先をちょこんと触れさせると――
エメラルドのかたまりは薄い緑色の霧となって霧散していった。
その瞬間を逃さないように、栞が小さな女の子に回復魔法をかける。
すると――
止まっていたはずの物語が動き出す。
娘の顔色が良くなり、安息の寝息をたてているのに気が付いた母親。
アルメイリアが栞を見上げていた。
その瞳は、みらいと同じエメラルドグリーン。
「あれ……あなた方はいったい?」
「娘さん助けにきた救世主やよ~」
「え?」
アルメイリアは、半信半疑ながらも、改めて娘の状態を確認して胸をなでおろす。
「どうやら、本当に、助けて下さったのですね。ありがとうございます」
「ええんよ。うちかて、みらいちゃんから頼まれただけやしなぁ」
「みらいさんというのは――あなた、その瞳!」
みらいと目を合わせたアルメイリアは気付く。
彼女もまた、アテライエルに瞳の光を差し出した者なのだということを――
「お察しの通りです。ですがこうしてアテライエルがそばに居れば目は見えますから」
「それは、本当なのかい?」
やや遅れて目覚めた父親。
ファルトが問いかけてきた。
「はい。ですからアテライエルとは、ココで別れるつもりです」
「なにを言っているのかしら? それでは、貴女が困ってしまうではありませんか」
「ですが……」
「大丈夫です。例え目が見えなくとも私には愛する夫がいますから」
「あぁ。その通りだ」
例え決められた言葉を発しているだけだとしても……
自分の両親がイチャイチャラブラブしているのを見せられると言うのは、精神的にけっこうくるものがあると知ったみらい。
「そうですか。ではアテライエルは今後も私と共に歩ませてもらいます」
「えぇ、よろしくね。みらいさん」
「はい」
「娘の命を助けてくれた恩人になにか報いたいのだが……あいにくと今は、王家を追われて落ちぶれた身。なにも用意出来る物がない」
「いいえ。私は、私の自己満足のために娘さんを救いに来ただけですので、どうかお気になさらず」
「いや、そういうわけにはいかない。本来ならば勲章の一つでもあげたいところなのだが……」
む~~~~と、うなるファルト。
「では、せめて称号を与えよう」
「称号ですか?」
「あぁ、今日からキミは深緑の魔王使いと名乗るがいい」
「はい。では、喜んでそう名乗らせて頂きます」
その後――
村人を開放し、縄をほどいてやる。
そして悪役を演じさせられていた人達を開放した。
ちなみに、悪役達は悪さが出来ないように縄で縛っている。
その上で、もう二度とこの村には手を出さないようにキッチリと脅して追い払った。
特に奇術師のド派手な演出がきいたらしく。
悪役の親玉も涙ながらに詫びを入れていたので、絵本に追記するエンディングとしては、これ以上ない仕上がりかもしれない。
これで、きっと多くの行方不明者を出していた事件も幕を下ろす事だろう。
多くの人を巻き込んだ一見壮大にも見える物語も、一端を見れば、幼き少女と絵本の中に住む友人を助けたいと一途にこいねがう友情の物語。
みらいにとって始めて出来た友達は、母が描いた絵本の中に住む魔王だった。
友を助けてあげたいと一途に願う幼き少女の物語は一つの終演を迎え。
終わっていたはずの物語が、つむがれ始める。
それは予定よりもだいぶにぎやかで、きっとわくわくとドキドキ。
そして、どたばたと、めちゃくちゃが止まらない冒険の物語。
「ねぇ龍好。あなたは誰かを選ぶの? それとも、やっぱりハーレムルート選んで皆仲良く?」
「さあな。んなことまで考えてねぇ。先のことなんて分かんね~よ。俺は、放浪する銀時計だからな。これからも放浪してさ迷い続けるさ。んで、辿り着いた所が答えって感じだろうな」
「やっぱりね。そう言うと思ってた。でも、これだけは忘れないでよね」
みらいは、照れた表情を見せないため視線を空に向ける。
「いい。ぃちぉぅ、その……私が正妻って事になってるんだから、その……、誰も選ばないっていう選択肢だけはないんだからね!」
「あはは、人生なんつーもんは、まだまだこれからだろ? そん時はそん時さ」
「いやはや、今日は、とても良い物を見させて頂きました」
奇術師は、とても嬉しそうだ。
そこに、みらいが釘をさす。
「言っとくけど。今日の事は、秘密にしてくださいよね!」
「分かってますよ。ボクは、勝手に記事にして悦に浸るような者ではありませんので、安心してください」
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