戦いを終えて

13-1


 みらい邸にて――


 来賓用の大広間で、いきなり始まった映像試写会。


 それは――


 バイオリンの独奏による、ほのぼのとして緩やかなメロディーに乗せて始まり。

 タイトルはピンク色でフォーチュンメモリーと描かれていた。

 映像は、空撮から入り。

 遠目に湖のほとりに在る円筒形の建物をとらえていた。

 カメラがゆっくりとソレに近付いて行くと。

 それは、可愛らしい全面ガラス張りの教会だった。

 教会の前には大きく両手を広げて手を振る男女のグループが居る。

 男性は白いタキシード姿。

 女性は色取り取りのウェディングドレス姿。

 彼女達の手にはブーケが握られていて。

 カメラが近付いて来たのを見計らうと。

 空に向かって投げ付ける。


 その内一つが見事にカメラに命中して画面が暗転。


 ☆ゴチン☆


 と、効果音が派手に入る!


 シンセサイザーを使った優しくもちょぴり悲しげな音楽に切り替わり。

 再び写し出された画面は教会の中。

 ソコには硝子越しに映る湖を背景にした少女が佇んでいた。

 彼女は、全身を黒で統一した魔法服を着ている。

 光沢のない、くすんだ銀髪と閉じられ二つの眼。

 彼女は何か心に葛藤を抱えているのだろうか?

 それとも何かを覚悟しているのだろうか?

 なかなかその瞳を開く素振りを見せない。


 一分ほど、そのまま時が過ぎると――


 何かを断ち切るかの様に!

 少女がクワッと両目を大きく見開いた!

 BGMが勇敢に何かをなし遂げるようとする英雄の背中を後押しするかのごとく。

 勇ましくも高揚感溢れる曲がオーケストラで鳴り響く。

 そして、左右目の色が違うオッドアイがカメラの方向を見据えて声高らかに宣言する。


「私は、真剣狩る☆しおん♪元帥! 未来の龍好の嫁よ!」


 画面は、そのままセピア効果で切り取られ。

 銀色の額縁に収まるとスタッフロールが流れ始める。

 ソコには銀十字騎士団の面々が連ねられ。

 最後に、監督の名前。


 しおりん♪


 と書かれていた!


 会場がぶっこっわれるんじゃないかっていうほど盛大に盛り上がっていた。

 鳴り響くクラッカーは、めっちゃくっちゃでっかくて、バケツくらいあった。

 炸裂音も凄ければ、飛び出す紙吹雪や、紙テープの量も尋常じゃない!


 完全に謀られていた。

 彼が何かに負けて落ち込む仕草の意味が今になって分かった。

 あの日のアレは全て、このためだったのだと理解した。


 だからといって、アレは一切強要されていない。

 自分自身の願望そのものだ。

 もう嘘は付けない。

 開き直って素直な想いを伝えよう。

 それを彼女が望むなら、望むというなら。

 自分は叶えて見せるまで!


 刹風が、


「どうせ栞に言わされたんでしょ?」


 と聞いてくるが、


「言っとくけど、アレは私が自分の頭で考えて言った本心よ」


 と、みらいはきっぱりと言い切る!

 するとまたしても会場が盛り上がり、多くのクラッカーが鳴り響く。



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