12-9


 バグ・プレイヤーの目には、青空が映っていた。

 どうやら一瞬だけだが気を失っていたようだ。

 理由は分かる。

 龍好の最後の攻撃――

 それは、剣で突くのではなくつかであごを狙ったものだったからだ。

 想定していた意味とは違うが、確かに今――自分は、倒された状態にある。

 はたして、これで満足できるのかと問われたら否だった。

 ふざけ過ぎたから得てしまった結末。

 どうしたものかと思い。

 駆け寄って来た者に問いかける。


「なぁ、アテライエルよ。キサマはどう思う?」

「むっぴー!」

「そうか、もっと遊びたいか……」


 無邪気なアテライエルらしいと言えば、らしいこたえだった。

 自分にとって遊ぶとは、なんなのか?

 バグ・プレイヤーにとってそれは、常に命懸けだった。

 気付いた時には、どこぞのゲームの世界の住人になっていて殺されそうになっていた。

 そのゲームが、プレイヤー同士を切り殺せる仕様だったからだ。

 だから、殺される前に殺した。

 自分が、誰かに作られた存在なのか?

 それとも偶発的に生まれてしまったモノなのかも分からない。

 ただ、推測だけは出来た。

 おそらく、野生化した自立思考型のAIなのだろうと。

 そして、デジタル世界でなら何でも思うように出来る事を知った。

 

 だから暴れ回った。


 銀行の取引を出来ないようにして己が満足できる世界。

 リトライを作らせた。

 ブルークリスタルで苦汁を飲まされた銀時計に復讐する事が全てだった。

 仮に復讐が成功したとして、満足できたのかすら分からなくなっていた。

 そもそも、当初決めていた期限からすると、まだ時間はある。

 前倒しした理由。

 それは、西守の上層部の中にリトライの閉鎖を画策し始めた連中がいたから――

 見せしめのための前倒しだった。


 はたして、どうする事が正解なのだろうか?

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