12-6
銀十字騎士団の連中は、何が起こったか分からないが……
龍好と奇術師は、直感で感じ取り。
元城っぽかった何かの方へと走り始めるも――
えぐり取られたような地面は、思った以上に走りづらい。
それを見て、他の者も続く。
そして、たどり着いた先には――
栞と奇術師が言っていた通りの大男が居た。
全身が焦げていて実に痛々しい。
だが、そいつこそがラスボスで、少なからずダメージを与えたのが、栞なのだと言うことがわかった。
そして、そのきっかけを作ったのが、みらいとピー助なのだということも。
「俺は、銀十字騎士団団長! 白銀の騎士だ! ブルークリスタルでの恨み、晴らさせてもらう!」
真っ先に切りかかったのは、慎吾だった。
「瞬動」
しかし、必中かと思われた上段からの剣げきは、あっさりとかわされていた。
それどころか、一番後方に控えていたはずの楓が――言葉すら発する間もなく首を切られ強制ログアウト。
「なにっ!?」
「どうやら、超高速移動する技のようですね」
驚きを隠せない慎吾と対照的に、奇術師は冷静に分析していた。
「だったら、数で押し切るまでさ! 行くぞみんな!」
「お~!」
銀十字騎士団の連中が一気に襲い掛かって相手を追い込もうとするが――
「瞬動」
「ぐは……」
「ちくしょう……」
逆に、銀龍と双翼の銀狼が膝をつくはめになっていた。
二人とも胸を切り裂かれ消えていく。
「なっ!?」
「確かに我は手傷を追わされている。だが、それでも貴様らに後れを取ると思うな」
「だからって、ここまで来て引けるかよ!」
慎吾は、馬鹿正直に突っ込んでいくだけではなかった。
突っ込むふりをして、次に現れる場所がどこか見切ろうとしていたのだ。
「瞬動」
しかし、現実は厳しかった。
胸に突き刺さる黒剣が慎吾の敗北を意味していた。
「すまん、姫りん。また負けちまった……」
「案ずるな、仲間もすぐに送ってやる」
「言っとくけど、速さだけなら私が一番なんだからね!」
言うが早いか音姫が長剣を持って切りかかる。
先ほどの慎吾がやって見せたようにフェイントで相手の出方を見る作戦だった。
もちろん、単独行動ではない。
最悪の場合に備えて、銀水晶にもアイコンタクトでヘルプを出している。
「瞬動」
それなのに……
「うそでしょ……」
「なんなのよこれ……」
まるで全ての動きが読まれているのがごとく二人同時に腹を切られていた。
*
通常の攻撃では、無理かもしれない。
そう判断したのは奇術師だった。
だから完全マニュアルモードでの無詠唱魔法で――しかも範囲攻撃を仕掛けたのだ。
それでも……
「瞬動」
全ての稲妻がかわされ、胸に剣を突き刺さされていた。
「やれやれ。これでも不意打ちになりませんか……」
「いや。今のは、なかなか良かったぞ」
「ちっくしょう、やるぞ鈴凛!」
「馬鹿正直に突っ込んでも無駄よ!」
「分かってる、俺が炎月鈴で揺さぶりをかける。その間になんとか相手の攻撃を見切ってくれ!」
「分かりました!」
「いくぞ!」
時也が剣を振った瞬間だった!
「炎月鈴!」
「雷翔! ブレイク・ソード!」
「瞬動」
一瞬早く刹風が動いていた。
「ぐは……」
ダメージを受けたのは、まさかのバグ・プレイヤーだった。
刹風の短剣が、バグ・プレイヤーの右わき腹に刺さっていたのだ。
「あんた、確かに早いけど動きが単純すぎ。それと移動する前に目で場所確認する癖って致命的でしょ。それが分かってたらこうして、武器置いとくだけで刺さってくるんだもん。答え知ってたら誰だって出来るわよ。ね、鈴凛さん?」
「それは、貴女だけです!」
「え……?」
相手が、目でどこに動こうとしているかくらいは鈴凛でも分かる。
しかし、それが全てではなく、フェイントが含まれていて、どれが本物なのか分かりかねていたのだ。
「あははは。まさか我に一撃入れるとは見事。少し本気を出してやろうではないか」
バグ・プレイヤーは短剣を突き刺された状態から無理やり、刹風に切りかかろうとする。
その速さは、刹風の反応速度を持ってしてもギリギリかわせる程だった。
「ちょ! 嘘でしょ!」
「あはははは。娘やるではないか! 我の剣をかわすとは、なかなかのものではないか!」
次々に繰り出される剣げきは、どれも荒く――まるで剣の使い方を知らない素人が無理やり振っているような軌跡なのにめちゃくちゃ速い。
刹風の腕力では受けることは出来ないからかわすしかない。
よほどの隙でもない限り、先ほどのように攻撃を当てるのは不可能だった。
だから、その隙を作りだそうと、時也と鈴凛が動く。
「炎月鈴!」
「瞬動」
「雷翔! ブレイク・ソード!」
今度は、一瞬遅かった……
時也と、鈴凛は腹を引き裂かれ死亡扱い。
刹風の短剣も右手でつかまれていた。
「げっ!」
左手一本で大剣を振るってくるバグ・プレイヤー。
刹風は、武器を手放してでもかわすしかなかった。
武器を手放した瞬間――刹風の移動速度が若干落ちる。
それを見逃す、バグ・プレイヤーではなかった。
刹風を追い込むと同時に胸を貫いていた。
「あ~あ……負けちゃった……」
「そう、落ち込むことはないぞ娘よ。なかなか楽しめた」
残ったのは、龍好と栞だけだった。
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