10-13
敵のヒットポイントを削った刹風は、徹底的に狙われ続けていた。
アルフレッドは、物理攻撃だけなので刹風が下りて来るのを待ち構えている感じだが、イルフィールの方は巨大な火の玉を次々に放ってくる。
その一つが、なくなっただけで、かなりかわしやすくなっていたとはいえ……
もちろん問題もあった。
マジックポイントの枯渇である。
空中で無限に跳んでいられるわけじゃない。
予想通り厳しくなってきたところで、跳びながら回復薬を飲む。
火の玉が一発ずつしか飛んでこなくなったところで刹風は、次の行動に出る。
威力は、かなりあるが当たらない大砲に恐怖は感じない。
しかも、一発撃ったら必ず、少し時間をおいてから次の攻撃を仕掛けてくるからだ。
そこに狙いを定めて、タイミングをはかり。
ほぼ直角に近い軌道修正からの一撃!
「斬岩剣! 二の太刀! 稲妻落とし!」
イルフィールの額――的の中心を深々と突き刺していた。
最高高度からの攻撃ではないため必殺とはならなかったが――それなりにダメージは入ったし。
ここからは、得意の鬼ごっこだった。
開けたフィールドを、火の玉かわしながら、アルフレッドさん達からも逃げ回る。
やがて火の玉が、飛んでこなくなり。
アルフレッドも一人ずつだが確実に減っていた。
そして、最後の一人が膝をついた時――
刹風達の勝利が確定していた。
「いや~。お見事お見事」
パチパチと拍手をする奇術師。
「きつかった~」
「確かに……」
武士と亜漣は、その場でへたり込み。
優菜も、
「もう無理。お腹いっぱいよ……」
お腹をなでながらへたり込んだ。
そして、それは健二も同じだった。
「うっぷ。もう、苦しいっす」
本来なら、一体倒したら終わりのはずのボス戦を連戦したのだから当然と言えば当然だった。
後は、報酬の配分だけが残っていた。
宝箱を開けると、それなりに価値のある物だったらしく喜んでいる。
「さてと、今回の一番の功労者に、これを進呈しようと思うが、異議のある者はいるか?」
武士が手にした物は、金色の首飾りだった。
赤い宝石がちりばめられていて、豪華そうだ。
「異議なし、っていうか、今回は完全に刹風さんのおかげだろ? 報酬の上乗せも考えた方が良いんじゃないのか?」
亜漣の言った事に、優菜も健二も同意する。
「ってことで、これを受け取ってくれ」
「はい……」
言われるがまま受け取ったネックレスの価値が、刹風には分からない。
とりあえずと思って、詳細を確認してビックリした。
「えっ! これって本当にもらっちゃっていいんですか!?」
オプション付きのアクセサリーで最大マジックポイントが増える効果があったのだ。
「いいも悪いもキミが居なければ得られなかった報酬だ。それから、報酬の上乗せもさせてもらう」
刹風の表示している画面には、当初の予定だった10万キャッシュが倍になっていた。
「えと、本当にいいんですか!?」
「刹風君。貴女の頑張りがなければ、仲良くペナルティだったことを考えれば当然の報酬だと思って頂くべきですよ」
「あ。うん。分かりました。ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとう。それにしても、まさかシーフが空を飛ぶとは思ってもみなかったよ」
「だな! あの、稲妻落としって技もすごかったしな」
武士と亜漣が物欲しそうな目で刹風を見ていた。
少なからず、自分達のメンバーに勧誘したいと心が動いてしまったからである。
しかし、刹風はすでに真剣狩る☆しおん♪のメンバーであり移籍するつもりは全くない。
「ほんと、リアルでどんな経験積んだらあれだけ速く走れるようになるのかしらね」
「確かに、驚異的な速さだったよなぁ」
優菜も健二も、物欲しそうな目で刹風を見ていた。
そんなこと、に全く気付かない刹風は、お仕事の終わりとばかりに頭を下げる。
「今日は、ありがとうございました」
「あぁ! こちらこそ、本当に助かった。気が向いたらまた一緒してくれ」
「あ、はい。仲間に相談してみます」
武士としては、本気でこれからも仲良くしていきたいと思って言ったのだが……
社交辞令くらいにしか受け取らなかった刹風。
彼らとの交友は、一時的なものにしかならなかったのである。
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