10-12
奇術師は笑う。
「いや~。良かったですね刹風君。早速自慢の必殺技の出番ですよ」
「ん~。でも、確実に当てられる自信がないかな~」
「そこで、アドバイスです」
「なんか良い手があるの!?」
「はい。ある程度距離が縮まったところでもう一度、雷翔を使って強制的に方向転換するんですよ」
「なるほど! その手があったか!」
「まぁ、貴女らしいと言えばらしいですが……普通は、『そんなこと出来るわけない』って言われるのが落ちなはずなんですけどね」
「そうなの? ナイスアイデアだと思うけど」
「では、貴女の思った通りに決めちゃってください」
本来なら後方待機のはずのおまけ。
それがメインのお仕事をもらってしまって嬉しくないはずはなかった。
特に、いつぞや痛い目にあわされたヤツに仕返し出来るみたいで気分も悪くない。
逆手に持った短剣の名を叫ぶ!
「跳び燕!」
刹風の身体中が、キラキラと輝きだす。
「とんずら!」
さらにファンシーな翼を背中に生やして急加速!
目指すは、超巨大ストーンゴーレム。
近づいた所で、ギロリと光る赤い目を向けて刹風に向かって襲い掛かろうとするも――
敵意を引き付けただけで刹風は反対方向に向かって走り出す。
目指すは、小さな宮殿。
アルフレッドさん達がイチャイチャしている所である。
ある程度、近づいて来た所で、
「雷翔!」
刹風が天高く跳び上がる。
雷翔を複数回使って最高高度に達したところで反転。
「雷翔!」
超巨大ストーンゴーレムの脳天めがけて突き進む!
動きが、それほど早くないとはいえ、動いている的に当てるのはかなり難しい。
空中である程度は、補正できたが……
やはり奇術師の言った通り。
もう一度足元に雷翔を発動させる必要がありそうだった。
「雷翔!」
超巨大ストーンゴーレムの脳天にある的の中心をとらえられる!
そう確信すると同時に叫ぶ。
「斬岩剣! 二の太刀! 稲妻落とし!」
的の中心を見事に突き刺していた。
最高高度からの重力加速を利用した攻撃は、一撃必殺。
高レベルの、超巨大ストーンゴーレムすら一撃で消し飛ばし。
地面すら吹き飛ばす。
そして、その余波を思いっきり食らう形でアルフレッドさん達を巻き込む。
物理防御力が比較的低めなイルフィールは、かなりのダメージを受けていた。
そして、一気に襲い掛かる6人の敵に対し、刹風はまたしても空を舞う。
「雷翔!」
それを見て、武士が指示を出す。
「優菜! 一番手近なイルフィールからやる! 釣ってくれ!」
「分かったわ! ビッグ・アイシクル・ランス!」
巨大な氷の槍が、イルフィールに突き刺さると同時に、優菜に向かてお返しとばかりに、巨大な火の玉が飛んでくる。
「マジック・シールド!」
まってましたとばかりに健二が対魔法用のシールドを張る。
完全に無効化は出来ないが、ダメージの軽減には成功している。
後は、得意の回復魔法で、削られたヒットポイントを回復させるだけである。
「亜漣行くぞ!」
「はい!」
武士と亜漣が突っ込みイルフィールに剣げきを加え始める。
刹風の地面爆弾作戦により、それなりに減っていたヒットポイントを削り切るのは、難しくなかった。
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