10-7
しばらくして、建物とか岩の計測器が元に戻ってきた頃――
咲夜は、おのれの認識の甘さを悔いていた。
「いってー! まさか、地面ごと吹き飛ばすとは思ってもみなかったぜ」
「えと、すみません。まさか計測器が壊れると思ってなくて」
「あぁ、全くだよ。……今後に備えて、もっと数値上げとかねぇといけねぇな」
「まぁ、何にせよ良かったじゃないですか、刹風君も新しい必殺技が出来たみたいですし」
「でも、今回みたいに相手がずっと同じ場所に居るとは限らないし……練習しないと厳しいかな」
練習?
どこで、誰と?
許されることなら、あまり関わりたくない。
そんな、空気の流れを察した奇術師が提案する。
「でしたら、求人広告に目を通して見るといいかもしれませんね」
「そんなの、あるの!?」
「それって、大丈夫なんでしょうね?」
喜んで食いついた刹風とは、対照的に。
みらいは、涼やかな声色で奇術師を睨む。
「はい。ご安心ください。ボクも同行しますし。シーフ系は、ただパーティーメンバーに居るだけでドロップ率が上がりますからね。それなりの需要があるんですよ」
「まぁ、貴方が同行すると言うのなら……私からは、これ以上口をはさまないわ」
「うちも、みらいちゃんがそう言うんなら、文句はない……な、たっくん?」
「あ、あぁ、そうだな」
本音で言ったら、刹風を取られるみたいで、ちょっぴり面白くない龍好。
それを察しているからこそ、栞は奇術師の話に乗る方向で進めているのだ。
パーティーメンバーだからと言って、いつも一緒は違うと思っているからでもある。
「ほんなら、みらいちゃんも新しい武器に慣れへんといかんし、どないしよう?」
「そこら辺は、帰りながら考えましょう。と言うことで咲夜君。今日は、ありがとうございました」
奇術師が礼を言うと、咲夜も気持ちよくこたえ、
「良いってことよ。こっちとしても悪い取引じゃなかったからなっ」
刹風に顔を向ける。
「と――忘れる前に刹風さん。物々交換以外での妖精の羽の金。送金したんで確認してくれ」
「えっ! こんなにもらっちゃっていいんですか!?」
「ここらへんじゃ、それが相場だ! また依頼するかもしれんがその時は、よろしく頼む」
「はい! 分かりました! こちらこそよろしくです! それと、今日は、ありがとうございました!」
刹風が礼を言うと、みらいも続く。
「私も、これほどの物が作ってもらえるとは思ってもみなかったわ。本当にありがとうございます」
「また、なにか欲しい物があったら、いつでも来てくれ! 気合い入れて作らせてもらうからさ!」
「はい、その時は、ぜひともよろしくお願いします」
みらいは、深々と頭を下げ。
栞は、あいかわらずのマイペースで手を振る。
「ほな、黄色の賢者さんまたなぁ」
「なんか、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
龍好は、刹風がやらかしたことを改めて詫び。
一行は、その場を後にしたのだった。
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