10-6


 みらいは、小手調べとばかりに普通に魔法を撃ってみる事にした。


「では、いきます!」

「おう、ぶっ壊しちまってもかまわん。ここら辺一帯、時間で元に戻る仕様だからな」

「はい! 百華一輪!」


 貫通力重視の魔法は今までと同じ。

 同じはずなのに、その大きさが段違いだった。

 見事的の中心をとらえた結果――

 その数値は10万ポイントを軽く超えていた。

 理論的には、この50倍の火力が最大で出せるのだから……


「500万越え……」

「そうだな、ある程度のボスなら一撃必殺レベルだろぅな」


 凄すぎる。

 だからと言って、これで終わりじゃない。

 むしろ、ここからさらに上を目指さなければならない。

 どのようなかたちであれ、この武器にふさわしい自分であろうと強く思うみらいだった。


「じゃぁ、じゃぁ、次は私の番だよね!?」


 まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のようにはしゃぐ刹風が居た。


「あぁ、そうだな。まずは名前を呼んでやってくれ。それで素早さが増すはずだ」

「そうなんですね! じゃぁ、跳び燕!」


 刹風の身体が銀色の光に包まれる。

  

「うん。なんか身体が軽くなった気がする! じゃ、とんずら!」


 さらにファンシーな羽を生やして加速力を上乗せする。

 作ってもらったばかりの短剣を逆手に持って猛ダッシュ。

 目指すは、大きな岩の天辺。

 岩の手前でジャンプして、岩の天辺で、


雷翔らいしょう!」


 誰も聞いたことのない技名と共に刹風は空高く舞い上がって行った。


「おそらく今のはボクのサンダースパークの応用ですね。きっと魚釣りの時にでも盗まれていたのでしょう」


 冷静に分析する奇術師とは別に、いや~~~~な予感を感じ取った龍好。


「栞! ビックオーガシールド用意!」

「はいな!」

「全力退避して、盾に隠れるぞ!」

「了解や~!」

「咲夜の兄ちゃんも、つっ立ってないでこっちに逃げてくれ!」

「あははは、さすがにそれはビビり過ぎだって! 俺は、ココで見定めるから好きにさせてくれ」

「まぁ、直接的な攻撃じゃないわけだし、最悪ちょっと痛い思いをするだけで済むんじゃないかしら?」


 みらいも比較的冷静に現状を分析していた。

 だが、龍好は感じ取っていた。

 生存本能が、これからヤバいことが起こるかもしれないと――


 その一方で刹風は跳んでいた。

 大空を満面の笑みで跳んでいた。

 この世界の最高高度は250メートル。

 そこから先は、壁みたいになっていて、それ以上うえに行けない仕様になっている。

 それを肌で感じ取った刹風は、くるりと反転し、


「雷翔!」


 約250メートル先にある的めがけて急降下!

 空気の流れや、風により若干の補正は必要になるが……

 鳥人間には、些細な事だった。

 まるで滑空する燕のように、開いた手の角度を若干動かしながら的に近付けていく。

 そして、この世界最高高度からの重力加速を利用した攻撃が的の真ん中を射抜く。


「斬岩剣! 二の太刀! 稲妻落とし!」


 ☆じゅっど~~~~~~~~~~~ん☆


 とんでもない音と共に岩は飛び散りその下にあった大地すら吹き飛ばす。

 記録できる数値を軽く超えたポイント計測器も吹き飛ぶ。

 その影響をまともに受けた咲夜は崩壊の影響をもろに食らっていた。

 対照的に刹風は何事もなかったかのように無事着地を終え……

 仲間が、新技の成功を全く見ていなかったことに気付いて駆け寄る。


「ちょっと! 人がせっかく、新しい技考えたって言うのに! なんで誰も見てくれてないのよ!」


 この展開を予想していた龍好は、栞からからハリセンを借りていた。

 

 ☆バシン☆


 刹風の脳天でハリセンが良い音を響かせる。


「この、大バカ! 少しは手加減ってもん考えろ! 見ろ、咲夜さんどころか工房まで吹き飛んじまったじゃねぇか!」

「え……?」


 刹風が、改めて見た景色は……なにか大きな物が落下してきた後みたいになっていた。

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