10-5
みらいは、この際だから――思いっきり我儘を言ってみる事にした。
それこそ、さきほど刹風が言ったみたいに出来るもんならやって見せろと言わんばかりに言ってやった。
「私は、もっと火力が欲しいので、10回分くらい魔法をストックして、それを一気に放つような物が欲しいです」
「10回で良いのかい? なんなら20回分でも出来るぜ」
「んなっ――!」
即答するどころか、みらいの予想をはるかに上回ってこられるとは思ってもみなかった。
「でしたら、可能な限りでお願いします」
「了解だ。黒の賢者から特にお前さんの武器には力を入れてくれって頼まれてるからな、思いっきり気合入れて作れせてもらう。ちなみに料金んなんだが――」
「そちらの言い値で買わせて頂きますので気になさらないで下さい」
「ふっ、聞いていた通りだな。だったら遠慮なく高級素材使わせてもらうぜ!」
そして、出来上がったのは、みらいでも扱いやすい小型の杖だった。
金属製のため、初級の杖よりは重くなるだろうが、許容範囲内。
そして、これからが本番だった。
妖精の羽を35枚取り出して咲夜は気合を入れる。
「悪いが、失敗覚悟の限界に挑戦させてもらう」
「えぇ、構わないわ。どうせ失敗したところで、平均を逸脱した上級品が出来上がるのでしょう?」
「あぁ、それだけは保証する!」
ゆっくりと呼吸を整えた咲夜が再び気合を入れる。
「能力付与術式。雷!」
再び杖が眩い光に包まれ――ゆっくりと、でも確かに妖精の羽が形を変え。
咲夜が打ち付ける金槌により妖精の羽が一枚――また一枚と吸い込まれていく。
先ほどの刹風の時に比べると明らかに時間が長い。
相応の、集中力と、精神力が削られて行くのが見ていてわかるレベルだった。
それでも――
「おっっしゃー! 新記録達成!」
「いやぁ、相変わらずお見事ですね」
拍手する奇術師はとても嬉しそうだ。
「あぁ、最悪大失敗やらかしても予備が山ほどあったからな、気楽に出来たおかげだ」
そして、みらいは――その性能を見て目を丸くしていた。
想像以上なのは、想定内だったが。
さらに数ランク上の出来栄えだったからだ。
見た目は、赤い宝珠が付いている以外――これといった特徴のない杖でありながら。
その性能は、とんでもない事になっていた。
特に、魔法のストックが50発と言うのがすごい。
非戦闘時に、回復薬がぶ飲みして用意しておけば、必殺技になりうる攻撃力を手にしたことになるのだから。
「ありがとうございます。ちなみに料金はおいくらでしょうか?」
「そうだな、今日は気分も良いし1000万キャッシュでいいぜ」
「わかりました。送金したので確認して見てください」
「おう、そいつも修理可能なアイテムだからな、折れる前にきっちり修理して長く使ってやってくれよ」
「はい、肝にめいじておきます」
「んじゃ、名前を付けてやってくれ」
「はい、炎の女神から一字もらってフレイルと呼ばせて頂きます」
「うむ。良い名だ。後は試し撃ちだな」
「できるんですか?」
「そりゃ、作ったはいいが、使う方が全く使えねぇようじゃ話にならんからな」
と言って、咲夜に案内されたのは、庭だった。
大きな石があって、そこに赤いラインで的が描かれていた。
その下に、数値が表示されるようになっていて、攻撃力が分かるようになっているのだ。
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