10-3



 龍好は、ハンマー・ストライクを高速回転させて追加ダメージを与える技を放つ。


「ハンマー・ショット!」


 先制攻撃は、もちろん命中し、それなりのダメージを与えたが……

 ザコとはいえレベル80の強さは、なかなかのものだった。

 ほとんど相手のヒットポイントは減っていない。

 弱点も見て取れないためニードル・スピアは使えないし。

 試験的なものだと言うのならピー助に頼るのも違うと思って待機してもらっている。

 本来の植物であれば、地に根をはっているものなのだろうが、コイツはモンスター。

 まるで足のように、太い根を使ってものすごい勢いで近づいてくる。


「たっくん癇癪玉いくよ~!」

「頼む!」


 栞の投げた癇癪玉は、茎の部分に命中。

 だいぶ力加減が上手くなってきたようだし狙いもいい。

 龍好に向かって高速移動していた赤い巨大チューリップもどきが栞に向けて花の部分をぐるりと一周。

 その瞬間、まるで火山が噴火するがごとく花の頂点が真っ赤に染まり巨大なファイヤーボールを飛ばしてきた。

 その可能性を読んでいた龍好は、


「ラインシールド!」


 高速で、伸ばした糸を回して魔法を吸収する。

 そこで、ようやく見えた弱点。

 ぎざぎざの歯が付いた花びらの奥――めしべの辺りに的が見えた。


「ニードル・スピアに換装!」

 

 時間は、ほとんどない!

 相手が、次の攻撃を仕掛ける前に――そこにニードル・スピアを突き刺さなければいけないのだから。

 龍好は、半ば強引に縦回転していたものを横回転に変えて弱点を狙い撃つ!


「ニードル・ショット! 栞! 手あたり次第ぶちかませ!」

「はいな~! うりゃ~!」


 根っこなのか足なのか分からないが栞のハンマーが押しつぶしていく。

 しかし、すぐに元に戻ってしまい――今度は噛みついて来た!

 そこを狙いすましたニードル・ショットでモンスターの動きを止める龍好。


「魔法をリリース!」


 先ほど吸収した、ファイヤーボールを相手の弱点めがけて打ち込んだ形だ。


「よし! ダメージ入ってる! みらい! 同じところ狙えるか!?」

「百華一輪! やれるけど勝手に始めてないでよね!」

「この程度のザコに勝てないで、この先どうするってんだよ!?」


 ある意味、龍好の言っている事はもっともだった。

 みらいは、強くならなくてはいけない。

 それこそ、こんなザコ一人で蹴散らせるくらいに――いや、それ以上、強くならなくてはバグ・プレイヤーには届かない。

 もちろんそんなこと龍好は知らないが、みらいの心を動かすにはじゅうぶんだった。


「ごめんなさい。私の考えが甘かったわ」

「あぁ。分かってくれりゃ、それでいい。刹風! 栞と一緒に削れるだけ削ってくれ!」

「了解!」


 約10分後……


 なんとかチューリップもどきは倒せていた。

 奇術師が、拍手をしながら近づいて来くる。


「さすが、というべきでしょうね。少しでも不安を感じたら助力するつもりでしたが、全くの出番なしとは思いませんでしたよ」

「なぁ、奇術師の兄ちゃん。時間的な事は問題にならないのか?」

「えぇ。それは大丈夫です。チームとしてでも、個人的にでも倒すことが出来れば合格ですから」

「んじゃ、こんな感じで、目的地まで行けば問題ないんだな?」

「いえ、今日の目的は、あくまで武器の新調ですからね。ここから先はボクが蹴散らして行きましょう」


 そう言った奇術師は、新聞書くついでに……

 もっと分かりやすく言うなら、遊び半分で敵を蹴散らしまくっていた。

 

 そして――


 目的地が見えてきたのだった。 

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