8-2
夏から、秋にかけて日増しに夕暮れが早まるのを感じる夕方。
河川敷に吹く風も日々強くなり少しずつ冷たさを増していく。
今は、まだ昼間の暑さも残っているが。
川原に茂った
そんな中――
調査対象者達が現れた。
報告書通りなら連れ添って歩いているのは、同居している男の子と女の子だろう。
向かって、左から――
男の子と思われる茶褐色の短髪は、ライトグリーンのティーシャツにグレーのハーフデニム。
ワインレッドの釣竿を右の肩に掛けている。
調査対象者と思われる黒髪の少女は黄色いワンピースを着ていて、空色のクーラーボックスを左の肩に掛けている。
もう一人は、他の二人よりも頭一つ分くらい背が高く、赤いタンクトップと薄茶色のクロップドパンツ。
青い網を左手に持っていた。
「あの三人で間違いないのでしょうか?」
みらいが、小春に確認すると、
「うふふふ、そのようですわね」
含み笑いをしてから先に降り。
助手席のドアを開け――みらいが車から降りるのを待つ。
「では、お嬢様御武運を!」
含み笑いを浮べた小春は、敬礼し。
みらいの目を見て何かを語っていた。
その意図は、全く分らないが、不穏な感じだけは伝わってくる。
それでも「では、行って参ります」と言って――
正面からこちらに近付いてくる調査対象者に歩み寄って行くみらい。
高鳴る心音と、えもいわれぬ期待感。
それが恐怖から来る緊張なのか、未知との遭遇に対する好奇心なのかは分らない。
こうして他の人間と歩いていると全く恐怖感は感じない黒髪の少女。
日焼けした肌に簡素な黄色いワンピースと白いサンダルは、夏という季節によく馴染んでいると思った。
やや赤みの掛かった栗色の瞳が自分を捉えて放さない。
それは、こちらも同じで――
みらいが、調査対象者に接触する数歩手前で立ち止まると。
三人も不思議そうな顔して立ち止まる。
どう考えても、この少女が自分達の行く手を阻んでいるようにしか思えなかったからだ。
全く見た事のない容姿は、可愛くもあるが、綺麗という言葉の方が似合う。
身に付けている物の殆どが赤で統一されていて。
ひらひらした白いフリルと鮮やかな緋色の対比は強烈でお姫様ごっこでもしているみたいだった。
小春がコーディネートした本日のテーマ。
それは不思議の国のお嬢様だった。
煌びやかな金髪を肩口で綺麗に切り揃え――ヘッドアクセサリーには真っ赤なバラの花飾りが添えられている。
全く日焼けしていない
きちんと化粧もしていて、特に唇は真っ赤だった。
服のボタン部分と思われるところにも、真っ赤な花飾りが貼り付けられ。
靴も艶やかなエナメル質の赤で、そこにも赤の花飾り。
どこを、どう間違ったらこうなるのか……とても夏に合わない暑苦しい格好だった。
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