友達の値段
8-1
――無垢なる破壊神に接触し、状況調査及び報告をせよ。
それが、みらいの受けた依頼内容だった。
飛級していなければ同じ学年の女子というのも理由の一つだったらしく。
一緒に行動し、肌で感じ取った危機感を克明に報告する事が求められていた。
相手は無垢なる破壊神とまで呼ばれる存在。
報告内容を見る限り不用意に近付いていい相手ではない。
報告書にも――現時点で戦車並みの脅威と記されていた。
しかし、そこには興味深い内容も記されていた。
肉親以外の者と一般家庭で同居しているとなっていたからだ。
怖くはないのだろうか?
これ程の危険因子と共同生活なんて果たして出来るものだろうか?
みらいは素朴な疑問を抱いていた。
そんな好奇心が背中を押し――
率先して彼女が通る可能性の高い道で待ち伏せする事にした。
銀色のコンパクトカーはハウスキーパーの長の妻。
今日は、分厚い防弾ガラスもなければ、ボディーガードも居ない。
ここに着いて早々。
隣に座った小春に同行拒否をされてしまい。
完全な単独行動での接触を強いられていた。
自らに仕える者でありながら決して絶対服従をよしとしない小春と一緒に車の中から、みらいは外の景色を眺めている。
手には、一万円札が一枚。
綺麗なピン札だった。
仕事を依頼してきた従者に『私には、面識のない相手にコンタクトをとる術がありません』と言ったら。
『これでも渡しておけば、貧乏人は簡単に付いて来るものですよ』と言って手渡された物。
正直なところ紙幣という物を手に取るのが始めてだった。
だから、すごく当然な疑問がわいてきた。
果たして、こんな使えもしない紙一枚で調査対象者は付いてきてくれるのだろうか?
と……
みらいは、この世に通貨があるという事は理解していたが。
それは知識として知っているだけで、実際に紙幣で買い物が出来る事を知らなかったのだ。
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