7-8
それが乱数的なもので決められているのなら納得も出来る。
だが!
公式には、必ずどこかにボスは居ると書いてあるのだ!
つまり、最上階まで行けば100%ボスは居るはずなのである。
だめもとでピー助にも聞いてみる。
「なぁ、ピー助は何か感じるか?」
「むぴゃ! すぴ~~~」
えっぼく!?
って感じで一瞬嬉しそうな顔をするが、直ぐに耳としっぽが垂れ下がって全く分りませんと、身体全体で心の内を龍好に伝えていた……
そして、くんくんと鼻を利かせ始めた。
「っそっか~。ドラゴンの勘でも無理か~」
そんな感じで各自――自分が出来る事をしながら最上階目指して歩む中。
刹風が、予定外の収穫を得ていた。
周りを凝視する……それは、白い賢者の技を見続ける事でもあった。
盗んだ技は二つ。
一つは、空中に足場を作る虚空脚。
もう一つは、聖なる光を剣に纏って敵を斬る技。
こっちは、白い賢者の基本技だった。
ただ、剣を構えるだけでこの状態になっている以上――名前は、ないのかもしれない。
斬岩剣同様に名付けが必要らしいが同じでも構わない。
本来は、光を纏うだけでなく大きさや形を変えて臨機応変に敵に合わせて戦うものなのだが。
それらは、完全に刹風の対応力の限界を超えていた。
一番の理由は、消費するマジックポイントの量。
ただ剣に聖なる光を灯すだけで、急速にマジックポイントを消費してしまうため。
技として昇華して使ったなら一発でマジックポイントが枯渇しかねないほどだったからだ。
しかも、初級レベルでもいいので回復魔法の習得が必須とだと明記されていた。
その理由と言うか原理は、回復魔法のだだ漏れである。
アンデット系に回復魔法を放つと相応のダメージが与えられる仕様になっていて。
それを剣に乗せて切り刻む事で効率をあげれるからである。
つまり、ただ剣に聖なる光を灯すだけであっさりとマジックポイントが終わってしまうという。
覚えたは良いが……全くと言っていいほど使えない技だった。
もっとも、鈴凛同様に課金アイテムの回復薬をがぶ飲みすれば問題は簡単に解決するが。
そして虚空脚は、とんずら同様。
風属性の技だった事もあり直ぐに設定が完了した。
空中に足場を作る原理が収束した風の塊で、ソレを蹴っ飛ばしながらの移動だったからだ。
ただ、消費マジックポイントが激しく。
白い賢者みたいに常時発動は出来ないため節約モードでの設定でなんとか凌ぐ事にした。
敵は、アンデット系。
骸骨や、ゾンビ。
映画に出てくる様な、無駄にリアリティーのある作りは、みらいや刹風を引きつらせていた。
白い賢者が霧散させているからいいが……アレを普通に物理攻撃すると。
ぐちゃ、とか。
べちゃ、なんていう聞きたくも無いリアリティいのある音が耳に残るのだ。
ただ、動くだけでべちゃべちゃといった吐き気のする音を薄暗い部屋に木霊させ。
息をしていないのに、不気味な呻き声を吐く。
オマケに、臭い。
とにかく異臭が鼻をついて精神的ダメージが大きかった。
ゆえに、骸骨はまだしも、ゾンビ系を倒すのはもっぱら、炎か、回復魔法使いによる聖なる加護を受けた光り属性の攻撃だった。
猫屋さんで普通に防毒マスクが売っていた理由が良く理解できた。
それらを華麗に斬り刻んでは一刀の下に消し去っていく白い賢者。
その動きは、ポイント重視の近代剣道ではなく、腕力や体術で敵を打ち倒す豪の技だった。
血のりのべったり付いた剣は、ただの鈍器に等しい。
だから斬るのではなく、ぶった斬るのだ。
敵の剣ごと!
敵の鎧ごと!
全ての一撃に手加減等一切無い斬激!
それゆえの細身のサーベルだった。
岩石系モンスターには、圧倒的に不利だが、相手が守備力に乏しい相手ならばコレでじゅうぶん。
潤沢なマジックポイントを贅沢に使った剣技は、光り輝き薄暗い闇に光を灯しているかの様だった。
壁は、レンガだが。
床は木である。
軋むが抜ける事はない。
しかし、時折柔らかいところがあり。
油断していると足をとられて、転びかねない。
しかも、足元がぬるぬるしていて歩き辛い。
ゆえに白い賢者は常に虚空脚を使用し、飛び跳ねる様に敵を霧散させていた。
そして、最上階に辿り着いた。
アレだけ激しく動き回りながらも息一つ切らせない体力はリアルでも相当の使い手であるのだろうことを物語っていた。
古ぼけたレバーは、錆びているが、見た目だけ。
「こっちは、準備OKだ」
「ええ、こちらも丁度着いたところです」
赤い賢者から通信が入ると白い賢者の画面に平然とした男が映っている。
彼も全く疲れているといった様子が見られない。
真剣狩る☆しおん♪一行は、というと、刹風と栞は元気だったが。
みらいは、臭いと歩き辛さですっかり体力を奪われ。
栞におぶさっていた。
ピー助は、勘が無理でも臭いでなんとか龍好の期待に応えようと頑張った結果。
臭いに中てられて、途中からふらふらし始めたので龍好が抱っこしていた。
その、龍好もかなり足が厳しかった。
それでも、日の光の入るこの部屋は救いだった。
時折強く吹き込む風は嫌な臭いを洗い流し……最後の決戦前に一時の清涼を与えてくれていた。
小さな明り取りの窓のには、ガラスなんてなく、焦げ茶色の古ぼけたレンガ作り。
残った時間は15分弱。
白い賢者がレバーを引くと右手側にあった大きな扉が開き――!?
外見からでは、ありえない場所に部屋が存在していた。
下から見上げた時――双子塔には渡り廊下は存在していなかった。
それなのに、ソレが存在し――
一定間隔で明り取りの窓がある。
その先には、赤い賢者が居て、こちらに向かって歩いてくる。
そして、中央部で合流。
「よし、10分あればじゅうぶんだ」
「ええ。ですが、これで無理なら約束を守ってもらいます! よろしいですね!?」
「ああ、分ってる。俺だって、そこまでバカじゃねーつもりだ!」
女が頷く。
「では、まいりましょう」
赤の賢者には、意地があり。
白の賢者は、その無意味さを教えたかった。
中央部には、龍好達から向かって左手側に扉がある。
目では見えない場所に部屋があったとしてもゲームの世界ならば、なんら不思議はない。
しかし――龍好は引っ掛かっていた。
視認出来ない場所に部屋があってもおかしくないならば、ここまでの道中にだって似た様な仕掛けがあってもおかしくない。
しかし、自分達が登ってきた塔には、そんなものは確認出来なかった。
ならば――対となるもう一つの塔!?
だが、時間的にそれを確認している時間はない。
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