刹風の服がバイトの制服?
奇術師の新聞により一部の者が勘違いをする事態になっていた。
それは、刹風の着ていた服がフィッシュライフの制服だと思ってしまったのだ。
その、要因は、刹風が付けっぱなしにしているフィッシュライフのバッチである。
常に付けっぱなしにしていると店の宣伝にもなるということでバイト代に上乗せされるようになっているため。
刹風は、胸に付けっぱなしにしていたのだ。
それが、新聞に載って広く公開されたために勘違いをうんでいた。
そこで、今まで制服は作らないと言う主義の店長の心が少しばかり動いてしまい。
試験的に、何名か刹風と同様の服装を用意する事になったのである。
*
刹風の後ろについて歩いているのは、アルバイト仲間の
二人とも年上ではあるが、高校生。
刹風から見ると大人っぽさも感じるが、おおむね子供と判断される年頃である。
琴葉さんのお店に着くと……やはり、客は居なかった。
「あの~。こんにちは、琴葉さん」
「あっ! はいっ!」
琴葉は、ぼーっとしていたため、慌てて立ち上がり。
接客しようと刹風達に向かって、営業スマイルを貼り付ける。
「何でしょうか!?」
「え~~~と。普通に服を作ってほしくてきただけなんですけど……」
「あっ! 刹風さん、でしたか。その節は、ご利用頂きありがとうございます」
「こちらこそありがとう、ございます」
「それで、服を作るとおっしゃいますと言われましたが……どのような服でしょうか?」
「今、私が着てるのの色違いを彼女達に作ってほしいんです」
琴葉の顔に笑みが浮かぶ。
基本データは、残っているし。
得意分野だったからだ。
問題があるとすれば、セーラー服の在庫が無いくらいのものだが――
非戦闘用の安い布ならいくらでも用意できる。
「分かりました。では、お好みのカラーを、おっしゃってくださいませ」
林檎と蜜柑は、互いの目を見てうなずきあう。
最初から決めていた事があるからだ。
「あの、私は、赤で、蜜柑ちゃんは、黄色でお願いしたんですけど……レギンスじゃなくて短パン仕様にしてほしいんですけど出来ますか?」
林檎の言った事に対し、琴葉は、お安いごようだとうなずいた。
「はい。その程度の変更でしたら問題ありませんよ」
「じゃぁ、じゃぁ、ついでに短パンのデザインとかの変更もできます?」
蜜柑の言った事に対しても――琴葉は、お安いごようだとうなずいた。
「はい。どのような条件でも規定範囲内なら、ご要望通りに仕上げて見せます!」
琴葉は、ルンルン気分で服を作り始め。
林檎と蜜柑は、それを見ながら、自分達の思う可愛いを徹底的に追求した短パンを目指して琴葉に注文を出し続けていた。
――そして、出来上がった服に着替えた二人。
それなりに可愛くなっていたが……
刹風には、思うところがあった。
それを、察した二人がアイコンタクトし同時にスカートをたくし上げる。
「じゃ~ん。どうですか? 刹風ちゃん?」
「なっ!?」
思っていた通り!
服と同系色のそれは!
どう見ても下着にしか見えなかった!
フリルをふんだんに使っているし。
とにかく、可愛い。
「ちょっ! 琴葉さん!? これって大丈夫なんですか!?」
「はい、なんの問題もありませんよ」
琴葉は、可愛い服が作れてとても満足そうだ。
「や、だって、下着ですよね! アレ!?」
「いいえ。あくまでも短パンの布面積を減らして、下着っぽくしただけですので規定範囲内のお仕事です」
「や、確かに、そうかもしれませんけど! これじゃ下着見せてるのと同じじゃないですか!?」
「も~。刹風ちゃんたら可愛いんだから~♪」
「そうだよ、刹風ちゃん。テニスで履くアンダースコートだって思えば、たいしたことないって。きゃは♪」
真っ赤になった刹風が面白くて、林檎と蜜柑は、笑っている。
「そうだけどね! 確かに、そうかもしれないけどね!」
普通の短パンとかは可愛さアップさせるためにリボンなんてついてないし……
そもそも、スカート部分が、そんなに長くないのだから。
これでは、お客さんに見せつけているようなものである。
しかし――
思った以上にお客さんの、ウケは良かった。
となれば、店の売り上げも上がり。
制服目当てでアルバイトを希望する娘まで現れたほどである。
店長としては、制服支給を認めざるをえない事態に発展していた。
そして、売り上げに貢献した刹風には、時給アップと言うおまけが追加され。
琴葉さんは、予想外の発注に、大喜びだったのである。
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